アナタがいたから…

<Sweet Orange Story

  Life めぐり会う言霊>

序章 5

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(何だって言うのよ!この連中は!褒めてみたり貶してみたり……)
私が出迎えた3人の態度にイライラとしていると、玄関からもう1人、白髪の混じったオールバックの髪型に広い肩幅で、少し歳をとっているように見えるが、やっぱりカッコイイ男性が現れてチラリと4人に目配せをする。
するとどうだろう、生意気な態度をとっていた連中でさえ、スッとその場に片膝をついて深々と頭を下げているではないですか。
(……ふ〜ん、ってことは、この屋敷の中では、この人が一番偉い人って事になるのかしら?)
勝手にそんな事を思ってその人を見ていると、その人はチラリと私を見て一言。
「……ふむ、チビだな」
「ぬぁっ!また!!」
「……また?またとはどう言う事だ?」
「誰だか知らないけど、会う人、会う人、初対面に対してチビチビって身体的特徴を誇張して言うのやめてくれない?!コレでも結構気にしてるんだから!」
「ふむ、それもそうだな。コレは失礼した。言い伝えで聞いていた者とはあまりに違う風貌なのでつい出てしまっただけだ。許せ」
「……許せ?何それ、あのねぇ、それって謝ってるつもりなの?」
はるか上空からそう言い放つ男に私が負けじと食い下がっていた時、ツンツンと、着ているスーツの上着の裾を引っ張られ、私はチラッと目線をそちらに向けた。
引っ張られるスーツの先には袁君がいて、目を瞑ってブンブンと首を横に振っている。
「……何?」
そう聞く私に袁君は小さな声で私に言った。
「ダメだよ、凛ちゃん。パパにそんな事言ったら……怒られちゃうよ……」
「?、パパ?」
袁君に言われてもう一度、私を馬鹿にしたオールバックを見てみれば、コホンと咳をしてフンと偉そうにその場に立っている。
たった3日間だったが、悪ガキ共の常識はずれでなっていないPTAも相手にしている私にしてみればだから何なの?って言う所。
「父親だろうとなんだろうと、初対面の人に対してその態度は無いでしょう?しかも!私はね、別にココに来たくて自分から来たわけじゃないのよ?なのにどうして私の方がこの人に頭を下げなきゃなんないのよ!」
「な、何だと?!」
「何よ!私の言う事は絶対間違ってないもの!どんなに怖い顔をしたって無駄よ」
思いっきり舌を出してアッカンベーをする私に眉を吊り上げ顔を赤くしたオールバックの後ろから大きな笑い声が聞こえて、皆がそちらを見た。
「アハハハ!良い根性してるじゃねぇか。こりゃオヤジの負けだな」
「うぐっ、聖(せい)!お前……」
「大体皆が悪いんだぜ?古の使徒の風貌を基にして勝手にイメージを作り上げてたんだから。正しいのはその人の方」
大きな笑い声と私を擁護する言葉を発しながら傍までやってきた『聖』と呼ばれた人物は、グシャグシャとした…ま〜良い言い方をすれば髪の毛を無造作にあそばせた黒く肩まである髪に、適当にある物を羽織ってきただろうといわんばかりのよれよれシャツを来ていた。
(……だらしない、その言葉そのものって感じよね〜)
あっけに取られる私を、聖君はチラッと見て、口を尖らせ少し考え込んで私に聞く。
「なんか、窮屈そうな服装だな。それ……」
「え?あぁ、スーツ?普通だと思うけど……って言っても世界が違うから普通も違うのかしら?」
「へぇ、異世界じゃその格好が普通なのか?」
「えっと……なんていえば言いかわかんないけど、働く女性がキチンとした格好をする時は普通というかなんというか……」
「ククク、面白いな。俺、アンタが気に行ったよ。俺は聖、アンタは?」
「り、凛……ってか、気にいったって何?!」
私が聞き返すと聖はまた楽しそうに大声でアハハと笑い、グイッと私を横抱きにして抱き上げチラッと皆の方を見て言った。
「どんな姿でも凛は俺達が呼んだ使徒様だ。こんな玄関先じゃなくって、ちゃんともてなすべきじゃないのか?」
「使徒様?ってか、もう呼び捨て?!」
「何?『ってか!』って流行なの?面白いね〜ってか?」
私を抱いて屋敷の中に入っていく聖君に何だか馬鹿にされているようで、思わず聖君の両頬を横に引っ張ると「いてててっ」と声を漏らす。
暫く呆然としていた玄関先の連中はその聖君の声にハッとして、慌てて私達の後から玄関を入ってきたのだった。


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