アナタがいたから…

<Sweet Orange Story

  Life めぐり会う言霊>

龍印 4

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豹君は思っていた以上に軽々と木の枝から枝へと飛び移り、予想していなかった木の高さに私はギュッと目を閉じて豹君の胸の中に顔をうずめる。
(ぎゃ〜〜こ、怖いよ〜〜落ちる!)
声にならない叫びを心の中で叫んで、風を切って進む豹君にしがみ付いた。
暫くして、ストンと言う衝撃を受け、風も飛び跳ねる感覚も無くなった時、そっと眼を開ける。
目に入ったのは見覚えのある玄関で、屋敷についたと言う事が分り、豹君の顔を見上げれば、顔を真っ赤にしていた。
「あ、あの……ごめん。重かった?」
「え?」
「顔、真っ赤だよ?重かったから大変だったんでしょ?ごめんね……」
「ち、違っ!り、凛は重くないよ……」
「そ、そう?」
豹君の顔はどんどん赤くなって私から視線を外し、コホンと1つ咳払いをする。
(……何?どういうこと??)
首をかしげて豹君をジッと見ていると、後ろから枉君が声をかけてきた。
「……なんだ、居たのか?」
その声に体をビクンと揺らした豹君は黙って頷き、私を下ろして、玄関へとスタスタ歩いて行ってしまった。
ひとりその場に残されキョトンとする私の横に立った枉君はポンポンと私の頭を叩き、腰を折って覗き込むように聞く。
「大丈夫か?」
「う、うん……ごめんなさい。心配かけて……」
「かまわん、さっきのは親父が悪い。女は誰でも言う事を聞くと思ってるからな」
「何それ?何様?!」
ムッと顔を歪ませて言う私に枉君は噴出すように笑った。
「ククク、ま、後で分るよ。それより他の皆に連絡を取らないとな……」
「あ、皆で探してくれてたんだっけ……どうしよう。ケータイとかないよね?」
「ケ、ケータイ?何だ?」
「うっ……やっぱり無いよね〜……のろしでも上げるの?」
「……さっきから何を言ってるんだ?」
「だ、だって連絡を取るんでしょ?」
眉間に皺を寄せて私の言う事に首をかしげて聞いてきていた枉君は、フゥと溜息をついて私を見る。
「異世界ではどうやってやるのか知らんが、通信手段ならある。植物を通して俺の声を送る……」
「植物を?」
「俺の特殊能力は植物を操り植物の力を使えることだ」
「あ、豹君が動物だってのと同じ?」
「そうだ」
私にニッコリ微笑んで頷いた枉君はその場に座り込んでそっと、近くの草に手を当てた。
草がふんわりと揺らめいて、枉君は緑色の光に包まれる。
(わ、凄……アニメだ〜アニメの世界だ〜〜〜)
妙に興奮してドキドキと枉君の様子を眺めていたが、枉君を覆っていた緑色の光はすぐに消え、枉君は立ち上がって私を見た。
「コレで良い」
「え?も、もう?」
「あぁ、じきに皆が戻ってくる。部屋に行こう」
「あ……へ、部屋かぁ〜……」
「どうした?」
「えっと、あのさ〜」
その場でモジモジする私に少しイラついたように枉君が言う。
「言いたいことははっきり言え!」
「うっ……そ、そんな、怒鳴んなくったっていいでしょ?!」
「フン!ババァが歳に似合わずモジモジしてるから、枉兄ちゃんが怒鳴るんだ」
枉君にいった私の言葉に嫌〜な生意気な声が私の背後から重なった。
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