アナタがいたから…

<Sweet Orange Story

  Life めぐり会う言霊>

龍印 12

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手を引かれるまま、燿君についていくと、燿君は枯れた花壇にやってきて、そっと、枯れた花に手を触れる。
その瞬間、バチンと大きな火花のような紫色の光がフラッシュし、私は「ウワッ!」と驚いて身を縮めた。
「な、何?今の……」
「……コレがこの庭を触れない原因。枉でさえ拒否される」
「じゃぁ、この庭にある草木が全部、触ろうとすれば今みたいな感じになるの?」
「うん。母さんの思いが強すぎるんだ……。ココに来る度に俺は母さんは死にたくなど無かったんだって思う。だからこんなに強い思いをこの庭に残したんだって」
燿君は俯いて、枯れた花壇を見つめながらそういう。
私は状況を知らないからなんとも言えない……でも、本当に燿君のお母さんの魂が、想いを残して未だこの場所にとどまっているのであれば、それは良い事の様には思えなかった。
(かといって、私はどうすればいいのかしら……私に何かできることは無いの?)
私がそう考えていると、ホンワリとした温かい物が私の腕から広がってくる。
(……何?)
チラリと燿君を見ても、燿君の様子に変わりは無い。
腕からの温かさは、私の体をすべて包み込み、その温かさに身を任せるように私は瞳を閉じた。
(優しい……)
≪凛……≫
(誰?……私を呼んだ?)
≪凛、彼女を救ってあげて……≫
(彼女?……彼女って誰?それに、救うってどうやって……)
≪お願い……救ってあげて。彼女を……≫
「凛!凛ってば!!」
やさしい女の人の声と会話をしていると、燿君の叫ぶように私を呼ぶ声が聞こえ、私は目を開く。
目の前に心配そうな表情で私の体を抱きとめている燿君が居た。
「……あ、あれ?私?」
「良かった……急にへたり込んで、目を閉じてるし、動かないし……」
「ご、ごめん……(夢?……でも……)」
燿君に支えられるようにして立ち上がった私は周りの様子が違うことに気づく。
目をこすり、もう一度良く周りを見渡した。
空気の流れの中に、ふんわりと漂うオーラが見える。
揺れ動く様々なオーラの中に紫色によどんだ風に重く漂うオーラ。
異質なそれが漂って来る方向は1つ。
「り、凛?」
燿君の腕を離れ、私はその方向へ歩き始める。
噴水を通り過ぎ、庭の更に奥へと進んでいけば、大きな薔薇のアーチがありそれをくぐり、恐らくバラ園だっただろう枯れはてた園内に入った。
(……あそこね)
重苦しいオーラはバラ園の一番奥にある美しい女の人の石像から溢れている。
石像の目の前に来て石造を眺めていると、後ろから燿君が声をかけてきた。
「……それが、母さんだよ」
「この人が。綺麗な人ね……」
「でも、凛。どうしてこの場所が分ったの?ココは庭の隅の方で簡単には……凛?」
燿君の問いかけに答えることなく、私はオーラのあふれるその石像に手を伸ばす。
バシーン!
「うっ!」
ビリビリと痺れると言うよりも、ジワジワと締め上げ全身まとわりつくように走る激痛。
「凛!」
「ダメ!来ないで!!」
私に寄ってこようとする燿君を怒鳴り声で止め、私は更に石像に向かう。
キィィーン!!
一際激しく弾けた火花は、私の存在を、私がその場所に踏込むことを拒んでいるようだった。
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