アナタがいたから…

<Sweet Orange Story

  Life めぐり会う言霊>

龍印 14

イメージ



「り、凛?!」
石像に手をかざし、動かなくなった私から急に金色の光があふれ出したせいか、燿君の驚く声が聞こえてくる。
でも、私はそれに返事をする事無く、溢れるその力に身を委ねた。
(……不思議な感じ。どうすればいいか分らないのに……でも、体がそれを知ってるみたい……)
私の体から溢れた金色の光は石像を包み込み、石像を砕く。
「凛!ど、どうなってるんだ?」
粉々に砕かれていく石像から丸くそして、黒い影が揺らめく珠が現れ、私はゆっくりその珠に手を伸ばした。
丁度手の平に納まる程度のその珠を手の平に乗せて私はそれを見つめる。
水晶の玉のようなその中にユラユラと黒い炎が揺れた。
ジッとその珠を見つめる私に、燿君が少し距離を置いて近づき聞く。
「り、凛……それは一体?」
ゆっくりと私は視線を燿君にうつした。
「コレが原因……燿君のお母様の意識をゆがめ、そして留めてしまっていたもの……」
「凛……お前、眼の色が……」
驚く燿君ににっこり微笑みだけを返して、私はそっと、その黒い珠を胸元で輝く龍印に当てる。
「あぁ……」
珠が私の肌に触れた途端、ジンとした感覚が体を駆け巡り、私は思わず吐息をもらした。
黒い珠は私の龍印に触れて、金色の龍印の光に焼かれ、蒸発するように黒さを失っていく。
(あ、熱い……それに、なんだか変な感じ……)
私の体にはジンジンと痺れるような感覚が走り、息が荒くなっていった。
(ハァ…ハァ……、辛いわけじゃないけど、この感覚、やばいかも……)
私が頭の中でそう思い始めたとき、珠から黒い澱みが消え、崩れ去った石像を包み込んでいた金色の光がフワリと人の形へと変化していく。
「か、母さん……」
燿君は驚きながら呟き、その瞳から涙をこぼした。
長い髪をなびかせて現れた意識に何とか耐えている私が声をかける。
(思いを……伝えて)
長い髪の女の人はコクリと頷いて、風に体を浮かせるようにフワッと燿君の目の前に降り立ち、そっと燿君を包み込んだ。
<燿……>
優しく包まれた燿君は、涙を拭く事もせず、返事も出来ず、その優しい光を見つめていた。
イメージ上へ
イメージ イメージ イメージ

web拍手 "

応援ヨロシクです♪イメージ
inserted by FC2 system