アナタがいたから…

<Sweet Orange Story

  Life めぐり会う言霊>

光麗 1

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「ぅ……ぅん……」
温かいバラの香りに包まれて、ふんわりとした感覚が体に伝わり、私はゆっくりと瞼を開いて目を覚ます。
「凛!」
真っ先に眼に飛び込んできたのは涙を流して私の顔を覗き込んでいる燿君だった。
はっきりとしてくる頭の中で、自分がその燿君に抱きかかえられているのが分る。
そっと、まだ微妙に震える手の平で燿君の頬をそっとなでながらその涙をすくって言った。
「フフ、意外。泣き虫なのね……」
「馬鹿野郎!凛まで……凛まで逝っちゃうのかと思ったんだぞ!」
「……ごめんね。心配かけて。大丈夫よ……少し、体の力が抜けただけだから」
ギュッと私を抱きしめる燿君の腕は、私の存在を確認するようで、その場にとどめるようにするようで。
たった一人だった私が死んで悲しんでくれる友達は居ても、ココまで私を求めてくれる人はいなかったから。
私はその力強さと温かさがとても嬉しかった。
フゥと小さく一息ついて、私は燿君に体を預けた。
まだ、頭も体もなんだか痺れたように思い通りに動かない。
自分の洋服の袖で涙を拭いた燿君は、私の体を包み込むように抱きかかえて立ち上がった。
丁度その時、庭の変貌に気づいたほかの兄弟達が現れて、私と燿君を囲む。
「……母さんの石像が。燿!何があった?!」
「豹兄……お、俺にも良く分らないよ……」
急に周りを囲んだ兄弟達に燿君はオドオドしてそういった。
確かに良く分からないと言うのが正しいのだけれど、この状況が分らない兄弟達は口々に燿君に詰問する。
ムッと燿君の眉間にしわができたのを見て私がそっと首を振った。
「ダメよ。そんなに質問しちゃ……燿君には本当に分らないと思うの……私にだって良く……わからない……」
「凛!無理しちゃダメだ……さっきまで倒れてたんだから」
燿君の言葉を聞いて、翳さんがそっと燿君の頬を撫でて聞く。
「倒れていたのか?」
「うん……母さんがね、現れたんだ。それで、消えちゃって……凛が倒れた。俺、ビックリして……凛まで、母さんと一緒に逝っちゃったのかと思って」
「……詳しく聞かないと分らないな。とにかく、凛を休ませないと」
翳さんにいわれ、燿君はうなづいて、体を預ける私を優しく、とても大事なものを抱えるように運んだ。
部屋に帰って来て、私はベッドに寝かされる。
「凛、ゆっくり体を休めてください」
「あ、翳さん……」
「はい?」
「燿君は悪く無いの……本当に、私も訳がわからないほどで……石像だって壊したのは私かもしれないし……だから……」
「大丈夫です。分っていますから。燿には少し説明してもらうだけですし、責めたりなどしませんよ」
「よかった……」
ホッとしたせいなのか、ふんわりとした布団のせいなのか、私は翳さんに頭をそっと撫でられて瞳を閉じ、体が布団に沈みこんでいくように眠りについた。
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