アナタがいたから…

<Sweet Orange Story

  Life めぐり会う言霊>

光麗 3

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唇に重なる感覚がフワリと、まるで風にさらわれるようにしてなくなった時、私はゆっくりと瞳を開く。
先ほどまであった体に残る闇の気配はスッカリ抜けきって、上体を起こした。
(今のは一体誰?それに……さっきのは何?)
呟く私の目の前の真っ白な空間からゆらりと陽炎が立つように緑の気配が現れて、大きく上へと伸び上がったその揺らめきは徐々に姿を女性の姿へと変えていく。
(……何?ううん、誰?)
先ほどの事があって身構える私に、燿君のお母さんの石像の前に立ったときの声が聞こえた。
≪凛……≫
私に危害を加える声ではないことが分り、ホッとしたが、やはり訳の分らない状態で知らないものが目の前にあって私は思わずズルズルとお尻で後ずさりする。
緑の揺らめきはその姿を形作ると大きく光り輝き、その場に1人の女の人を誕生させた。
(え?!曾々お祖母ちゃん?)
ニッコリ微笑む女性に私は思わず眼を見開いて、叫ぶように身を乗り出す。
聖母のように優しい微笑を向けて私の目の前でしゃがみ込んだその女性はコクリと頷き、私の頬を優しく撫でた。
≪こうしてアナタに姿をみせるのは初めましてになるわね。凛≫
(ど、どうして……曾々お祖母ちゃんが?)
≪アナタは私のネックレスをブレスレットにして持っているでしょう?それは私が肌身離さずつけていた私の大切な人にもらった物。だから……私の力と私の意識がその中にしみこんでいる≫
(……じゃぁ、アナタは曾々お祖母ちゃんでは無いと言う事?)
≪正確にはそうなるわ……だから零凛でいいわ。なんだか曾々お祖母ちゃんって言われるのはくすぐったいから≫
(ん……わかった)
≪でも、アナタがそのネックレスを持っていてよかった。こうして会うことが出来たんだもの……≫
彼女の言葉に私は自分の腕につけているネックレスをそっと差し出し、見つめて呟く。
(……うん。私にとって、コレぐらいが家族の形見だから……曾々お祖母ちゃんがしていたっていう話と一緒に、その後、私の家庭の女性に受け継がれてきたもの……母さんもコレをしてた。母さんが死んだ時、私にはこのネックレスしか形見が無かったから……)
女系の我が家はその子が12歳になった時、このネックレスが渡された。
何故そんな事をするのかはわからなかったけど、私は母さんがいつだって身につけていた、綺麗なネックレスが羨ましくって、コレをもらった時はとても嬉しかった。
何故か母さんはとても寂しそうな笑顔を向けてきたけれど……
(私がこのネックレスを貰って2年も経たないうちに母さん達は事故で居なくなってしまったから……私にとっては大切なもの……だから、いつも身につけているの……流石に教育実習中にこのネックレスは宝石が大きくて派手に見えるから今は腕につけてるけど)
≪そう、私がいなくなった後はそんな事になってるのね……龍印のせい、そして、私が光麗としてこの世界に留まるのを拒んだせいだわ……≫
零凛はとても悲しそうな顔を私に向けて、私の腕にあるネックレスに手を重ね、ホロホロと涙をこぼした。
そんな零凛の手に更に私は手を重ねて、ジッとその瞳を見つめて言う。
(ねぇ、お祖母ちゃん……教えて、光麗って何?龍印ってなんなの?燿君のお母さんが風になって去る時に私に言ったわ。龍印は諸刃の剣だって)
≪……そうね、知らなければならないわ。アナタがこの世界に召喚されてしまった今となっては尚更に≫
コクリと頷いた零凛はさっと腕を振り上げて、そこから光を放つ。
私は驚いて瞳を閉じ、光が収まったのを瞼の向こうに感じて、瞳を開けてみれば、私と零凛はまるでシャボン玉のような丸い透明の膜の中にはいってフワフワと浮いていた。
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