アナタがいたから…

<Sweet Orange Story

  Life めぐり会う言霊>

光麗 5

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フワフワと浮いているシャボン玉の様な物体は、私と零凛を入れたまま、暗く沈んでいる先ほど引きこまれそうになった場所の真上で浮かんでいる。
気配を感じるのか無数の手が私のいるしゃぼんへと伸びてきたが、シャボンの外側に触れるとジリと焼かれてその黒い手は引っ込んでいった。
≪本来であれば……≫
零凛はその闇を睨みつけるようにして眉間に皺をよせて見つめたまま言う。
≪龍印により取り込まれた闇は光麗の体内で浄化されます。しかし、アナタは、体内に取り込んだ闇を浄化しきれずにいて、闇は未だこうしてアナタの心のうちでくすぶって、隙あらばアナタごと闇に取り込もうとしている……≫
(コレが……闇?)
≪そう、闇。ただの闇ではない、清らかさのカケラも無い穢れの闇。凛、闇や光、全ての物にはその本質の中に2種類の系統が存在します≫
(2種類?)
≪清らかなる存在と穢れのある存在。清らかなる闇はそれだけで安らぎを与えます。アナタが夜の闇を怖いと思わないでゆっくりと体を休める事ができるなら、それは清らかな闇がアナタを包み込んでくれている証拠。しかしそうでないとき、それはその闇の中に穢れが存在しているのです。妬み、恨み、欲望……その様な負の感情。それが穢れの正体≫
私は零凛の言う事が半分理解できて半分理解できず、チラリと足元に広がっている暗闇を見つめて呟く。
(そんな感情。普通じゃないかしら……2つに分けてしまうなんて)
≪……≫
(全てを善悪で分けてしまっているようで……なんだか変だわ)
≪……だからアナタは全てを浄化しきれないのね≫
私の言い分に少し不満を顔に浮かべて溜息をついて零凛は言うが、私はそんな零凛に自分の気持ちをぶつけた。
(だって、私だって抱いたことのある感情だわ。生きていれば誰もが一度ならず何度も抱く感情でしょ?全てが綺麗で、清らかな人なんていないわ……いたらそれこそ天使のような神様だわ)
≪そうね、アナタの言う事は正しいことなのかもしれない。でも、光麗はそんな感情を持つ事は無いのよ。本来はね。でも、アナタは違う≫
(違うといわれてもコレが私だわ。第一、負の感情を持っていて何が悪いの?羨ましい、悔しい……そんな負の感情が頑張ろうと思える力になる時だってあるのに……)
≪それがいえるアナタはそれで素晴らしいわ。でもね、そんなアナタのように考える人ばかりではないのよ。それだけの感情しか持ち合わせていない人もいて、負の感情を他の人に無理強いしている者がいたとしたら?さっきの燿君のお母様も同じこと……≫
(どういうこと?)
≪彼女は自ら望んでその身を投げ出した……でも死の直前に思ってしまったの「嫌だ、このまま死ぬのは嫌だ」そう思った。その感情につけ込み負の感情を増大させ、その感情は彼女をあの場所に縛り付けた……彼女はあの場所を離れたいのに離れられなくなってしまったの……≫
(そんなことするなんて……)
≪誰もが持っている感情だけれど、全ての人が綺麗な存在では無いけれど、それを捻じ曲げてしまうなんておかしいことでしょ?捻じ曲げられてしまったその人自身も苦しんでしまう。負の感情を認めているアナタの中に入ってもなお、アナタ自身を飲み込もうとしている曲がった存在。それがこの闇の正体であり、この闇の力でこの世界を飲み込もうと考えている存在がそうしたのよ……≫
(それは……誰?)
≪その昔、私と仲間が光に封じたはずの集団。DarkSideAngel〜ダークサイドエンゼル〜と名乗っていた集団。どうやら今は侘瑠火と名乗っているようだけど……≫
(侘瑠火……)
私は、私が何をすべきなのか、分ってきた様な気がしていた。
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