アナタがいたから…

<Sweet Orange Story

  Life めぐり会う言霊>

光麗 8

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砂我羅さんの部屋だと言う場所に行って、私はまた溜息をつく。
屋敷の中央にあたるだろうその大きめの部屋の扉を開いてみれば、相変わらず周りに女の人をはべらせてくつろいでいるバカがいた。
部屋に入ってきた私を見て砂我羅さんは言う。
「これはこれは。眠り姫のご登場ですな」
明らかに嫌味だろう言葉を投げかけてくる砂我羅さんにフンと鼻息で返事をした。
「相変わらずの女垂らしっ振りで。それより、話があるの……人払いしてくれない?」
「ほぅ、2人っきりでお話とは……」
「心配しなくて良いわ、そういう関係の話しじゃないし、そう言う事にはなりえないから」
少しムッとした表情を浮かべながら、砂我羅さんは手を水平に動かして、女たちを部屋から出す。
部屋の外で待っていた燿君が、部屋から女の人が続々と出てくるのを見て、入り口近くにいる私に声をかけた。
「凛?……何か始まるの?」
「ん、ちょっと砂我羅さんに用があるの……燿君もちょっと待っててね」
「……俺も聞いちゃいけない事?」
「とりあえず砂我羅さんと話しをしてから」
「ふ〜ん……わかった」
燿君にそういって、扉を閉めたとたん、私の意識は内側に引きずり込まれるように中へと沈み込み、喋る事も体を動かす事もできなくなる。
(ちょ!ちょっと!借りるなら借りるでちゃんと言ってよね!)
≪言った所で代わるんですからかまわないでしょ≫
(そういう問題じゃないでしょ!)
確実に私の言う事を無視して、私に代わって私の体を操る零凛はゆっくり砂我羅さんに近づいてフゥと一息ついた。
≪全く、鬼頭の男の能力は厄介ね……≫
「何だと?!小娘……」
そう言いかけた砂我羅さんは私の顔を見て言葉を呑んだ。
(……どうしたのかしら?)
私が自分の体の中から自分の体を動かすことが出来ないまま、見つめていると、ふんぞり返っていた砂我羅さんがスッと片膝をついて、私の手をとり、そっと口付けを落とす。
「……光麗様」
≪元光麗ね、今は凛が光麗ですから≫
「しかし……」
≪長い平穏がその目を腐らせたのかしら?彼女にもちゃんと光麗である龍印は刻まれています。称慶(しょうけい)はまだですが……それでも、彼女をこの世界に呼び出したのはアナタでしょう?なのに、何ですか?彼女に対してのその態度。王の称号が泣きますね≫
「そ、それは……」
あの偉そうだった砂我羅さんがしどろもどろになって、下を向いたが、零凛はその様子を気にする事無く続けた。
≪鬼頭の上に立つ男がどうしようもないのは数年前たってもかわりませんし、仕方ない事ですね。その力を有したものは必ずそうなります。ただ、アナタは王の称号を与えられた鬼頭の上に立つものなのです、もう少し己を律する事ですね≫
「……はい」
なんだか母親に怒られている息子のように素直に項垂れる砂我羅さんが少々かわいそうになる。
それほどに零凛の言葉はとても強く、きつかった。
(曾々お祖母ちゃんって好戦的な性格だったのかしら?それとも本人ではなく零凛の力だから?)
写真でしか見たことの無い曾々お祖母ちゃんだったが、その顔はとても優しそうで温和な感じ。
でも、今ココに居て砂我羅さんに言葉をかける零凛は写真とはまるで別人のように思えた。
≪それはそうと、元光麗である私からお願いがあります≫
「何でもおっしゃってください」
≪凛にはまだ学ばねばならぬ事が多い。ついては東の森の奥深くに住むアーリーの元へ送りたいと思います≫
「ア、アーリー様ですか……」
砂我羅さんは零凛の言葉に少し困ったような顔をして、ハァと溜息をついた。
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