アナタがいたから…

<Sweet Orange Story

  Life めぐり会う言霊>

侘瑠火 4

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「じゃぁ、今夜は俺がこうして抱きかかえておいてやるよ」
「だ、抱きかかえてって」
声が思わず上ずる。
「こうして抱きかかえられてれば一番安心だろ?」
「え?え?えぇ?!」
「ククッ、面白ぇ顔」
面白い顔、そういって私に悪戯な笑顔を見せた燿君だったが、次の瞬間には優しい顔がそこにあった。
赤い瞳の中に戸惑った私の顔が見えて、年甲斐も無く、年下のお子ちゃまの言う事に私の胸は暴れ始める。
何かあれば、ココの連中はすぐにお姫様抱っこで私を抱きかかえるから、横抱き状態にはなれてきた。
でも、こんなのはちょっと……。
(や、ヤバ……この状況はヤバくない?ど、どうすればいいのだ?!)
赤い瞳が私の顔から離れる事は無く、ジッと見つめられ、思わず視線をそらしてしまう。
「あ、えっと。だ、大丈夫よ。だって皆が守ってくれてるんだもんね」
アハハと乾いた笑いをして顔をそらせ腕から逃れようとしたが、燿君は私の体を抱え込み、頬に手をあて、私の顔を自分に向けた。
私は異性に告白した事はおろか、された事も無い。
可愛いなんていわれたことないし、何より中学時代まではイジメにあってて人を信じてなかったし。
【恋愛情報】は少女漫画と高校時代の恋愛経験のある友達の話しだけ。
そんな私がこうなればいいな〜なんて、妄想したその世界の真っ只中にいる。
しかも、相手は大人の男ってわけでは無い、年下の燿君なんだから不思議。
でも、どうしてだろう?
あんなに憎たらしくって、クソガキに思えたのに、今は何だか私のほうがガキっぽい。
(私って、こんなに現金だったのかな〜)
思っていた以上に体は大きくて、小さな私なんてスッポリ埋まってしまって、ガキとは思えない視線を向けてくるもんだから私の心臓が暴れるんだ。
ニッコリ微笑む燿君の笑顔とは対照的に私の頬は引きつる。
優しく微笑み返せれば大人の女の余裕が出るんだろうけど、私の顔に出るのは引きつる笑いだけ。
頭の中は結構なほどに真っ白で、ゆっくり近づいてくる燿君の顔を固まってただ見ているしかなかった。
「凛……」
他の兄弟と違って、燿君の声は低さの中に少し澄んだ高い音が含まれる。
自分の名前を呼ばれて私はゴクリと唾を飲んだ。
(うきゃ!ど、ど、どうなるってか、コレってマジ?!)
そっと近づく燿君の熱い息と燿君の香りが私の顔全体を包み込んで、あと少しで燿君の唇が私の肌に触れるかと言うところ。
私の心臓は本当に口から飛び出すんじゃないかと言うくらいに跳ね上がって、ドキドキドキドキ。
(ヤ、ヤバイ……し、死ぬ……)
ぎゅっと目を閉じてただ固まっていると、ピタリと燿君の動きが止まり、それと同時にテントの入り口から声がした。


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