アナタがいたから…

<Sweet Orange Story

  Life めぐり会う言霊>

侘瑠火 5

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「抜け駆けすると後で兄貴たちに叩かれるぞ?」
「うぅぐ」
へんな返事をする燿君の声に閉じていた目を開けてみれば、燿君の顔に草が絡みついている。
蔓の延びている先、テントの入口には腕を組んで立っている枉君がいた。
(た、助かった…)
ホッとした反面、少しの残念さがあるのも否めない私は自分自身に苦笑い。
だってさ、ファーストキスになるかもしれない所だったし、何よりこの状況、雰囲気抜群だったから。
って、言えるのは未遂に終わったからよね。緊張しまくってたのは事実だし。
枉君は燿君に植物を絡ませたまま、ゆっくり近づいて、燿君の腕から私を救い上げるようにして立たせてから、燿君の体に絡み付いている植物を消した。
燿君は顔に張り付くようにあった植物の葉っぱが無くなって、ゴホゴホ喉に手を当てて咳をし、噎せながら枉君を見る。
「お、枉兄。せめて鼻か口、どっちか呼吸できるようにしてくれよ!両方ふさがれたら息苦し……ゴホッ」
「フン、抜け駆けしようとした罰がその程度でありがたいと思え」
「ぬ、抜け駆けって…コホッ。凛がいいって言ったらいいだろ?」
「……凛、良いって言ったのか?」
「え、えっと……なんか、流れ的にそうなったみたいな……」
私の肩を抱いて、自分の胸に抱き寄せ、ジッと緑の瞳で見つめてくる枉君にタジタジと答え、枉君はその答えを聞いて燿君をにらみつけた。
ただでさえ雰囲気も全て強面の枉君がにらみつけるんだから、私は慌ててフォローに回る。
「あ、で、でも、燿君は私が怖がるから安心させようとしてただけだし、結果、何も無かったんだから平気、平気〜」
ワタワタ腕を上げて、手を振り、枉君の燿君に突き刺すように向けられる視線を遮って言うと、枉君は息を1つ吐いて私を見つめた。
「何も無いならそれで良いと言うわけでは無いだろう?」
「うぐ……だって……」
言われてみればその通りなんだけど、真正面向かって言われるとさすがに凹む。
「フ〜、仕方ない、凛がそういうならそう言う事にしておこう」
少し笑っているような、そんな声が頭の上から聞こえて、優しく私の頭は撫でられた。
「あ、あの……この事、皆には」
「安心しろ、言わない。っていうより言ったら燿は半殺しだろうしな」
「ウッ……半殺し……」
「当たり前だろう?約束を守れないやつは何をされても文句は言えねぇんだからな」
私は先ほどから枉君の言っている言葉が気になって、枉君を見上げて聞く。
「ねぇ、さっきから気になってるんだけど」
「ん?なんだ?」
「【約束】とか【抜け駆け】とか一体何の事?」
きょとんと聞く私に、2人は頬を少し赤くして、顔を見合わせた。


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