アナタがいたから…

<Sweet Orange Story

  Life めぐり会う言霊>

侘瑠火 7

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「凛!どうしたんです?!」
テントから出てきた私の姿を見つけた翳さんが驚いた声をだして近づいてきたが、零凛はそれを手で制止してニッコリ微笑む。
「ごめんなさい。凛じゃなくって零凛なの。他の兄弟達も集まってくれるかしら?」
静かな零凛の声はシンと静まりかえった暗闇の中では良く響いた。
豹君は木の上から、泪さん達は木の陰から顔を出し、零凛が言葉をかけようとした時、聖君が言葉を発する。
「……なにか来るな」
聖君の言葉に零凛が頷く。
「そう、どうやらお迎えらしいわ」
「お迎え?零凛様をですか?」
首をかしげる泪さんに零凛は続けた。
「いいえ、私じゃないわ。凛をね、迎えに来たのよ」
「凛を?」
「そう、凛を。侘瑠火がね」
「な!?なんですって?!何故、侘瑠火が凛を……」
「言っておくけど、凛の力は何も鬼龍王の為にあるわけじゃないわ。彼女の持つ力は彼女の心1つで敵にも味方にもなる」
「敵にも?」
「そう、敵にも。まね、それは相手も同じよ。侘瑠火にしても凛を取り込めなくって鬼龍王につけば敵になるわけだし」
(……そ、そうなの?)
零凛の言葉に思わず私も呟く。
召喚されたって事は召喚した人の味方になるものだとずっと思っていたから、零凛の言葉は意外だった。
「召喚っていうのはただ、この世界に呼び込むだけの儀式であって、それにより主を決めるものでは無いわ。全てはその人の心次第。誰の為に己の力を使いたいか……とはいえ、凛の力はまだまだ未熟だから誰に使うとかそういう次元には達してないけどね」
「それじゃ、母さんの時は?」
テントの中から現れた燿君が零凛に聞くと、零凛は振り返って微笑んだ。
「彼女を救いたい、燿君を救いたい……その思いが侘瑠火の呪いを打ち消させたの。別に凛は鬼龍王を救いたい、侘瑠火をどうにかしたいって思ったわけじゃないわ」
「俺を?」
「凛はとても未熟者なのよ」
(悪かったわね……)
「でもね、だからこそ、その心の動きに敏感に力が反応してしまうの……」
「心に敏感?」
「そう、だから危険なのよ。今、侘瑠火に上手く彼女の心を操られてしまえば彼女の力は侘瑠火に落ちる」
(私も馬鹿じゃないんだからそんな簡単に落ちるなんて……)
「凛の考えがどうであろうと連中はそれだけの力を持っているのよ……梟がいい見本でしょ?彼の力は決して弱いわけでもない心も同じ。なのに彼は操られてしまった……侘瑠火に」
「……その通りです。しかし、梟兄様程の人でもあのようになったと言うのに凛がどうにかできるものでもない様な気がするのですが……」
(そ、そうよ。そんな連中、私がどうにか出来るわけ無いじゃない……)
「龍印をもつ光麗が本当に目覚めた時、その心をどうにかできるものなどこの世界には居ないわ。だからこそ、侘瑠火は今、この瞬間を狙っているのよ」
キッと零凛は前方の暗い闇の中を睨んだ。


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