アナタがいたから…

<Sweet Orange Story

  Life めぐり会う言霊>

侘瑠火 8

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ゆらりと陽炎が揺らめくように闇がゆれる。
「誰だ!」
燿君が揺らめく闇に向かって手の平に集めた炎の固まりを投げつけると、炎の玉は弾ける事無く、その闇に吸い込まれた。
「なっ?!」
「ククク、そのような幼稚な術、避けるまでも無い」
「何だと!?」
「鬼龍王も落ちたものだ……このような技しか使えぬとは」
低くけれども澄んだ声が辺りに響き、ゆれる闇から金色に輝くフワリとした長い巻き毛の男の人が現れる。
(……誰?あの人が侘瑠火?)
男は白い、まるでシンデレラや白雪姫に出てくる王子様が着る様な洋服に、ちょっと悪者っぽい黒いマントをかけて、チラリと流される瞳は翡翠のように綺麗に揺らめいていた。
(あの人が侘瑠火っていう人なのだとしたら意外だな〜)
【悪役】っていうと大抵ゴツイ男だったり、ブサイクが定番って感じだった私にとって、目の前に居る美形としか言いようの無い男の人が侘瑠火という、聞いていた【悪役】だとは思えなかった。
フワリと私の目の前が暗くなって、翳さんの背中があられる。
気がつけば私の周りは皆に囲まれて守りを固められていた。
「貴方が侘瑠火だと思って宜しいでしょうか?」
静かに聞く翳さんの声はとても低く怒っているようで私は思わずビクッとしてしまう。
「えぇ、そうですね。正しくは侘瑠火の1人と言うところですが……」
(あ、やっぱりそうなんだ。ふ〜ん、一見王子様みたいなのに悪役か〜変な感じ)
(凛、貴女は馬鹿ですか?見た目で敵味方を分けるなんて)
あきれ返ったような零凛の声が聞こえ、あまりの言いように私も呟く。
(馬鹿って……アンタの子孫なんですけど?)
「(馬鹿だから馬鹿だといったんです。暫く黙ってらっしゃい)1人と言うのはどういう意味かしら?」
目の前に立ちふさがった翳さんの腕に手をかけて、翳さんをゆっくり横に移動させ、姿を見せた零凛が聞くと、にっこり妖艶な微笑みを浮かべ、男の人は視線を零凛に向けた。
私の姿を上から下、下から上へと舐めるように眺めた男の人はポツリと言う。
「もしかして貴女が光麗か?」
(……もしかしてって、何か嫌な感じ……)
コチラの世界に来てから容姿について散々言われ続け、慣れてきたとは言え、舐めるように見て呟かれるとやっぱりムカつく。
「ふ〜む、思っていたよりも……」
「思っていたよりも何かしら?」
「失礼、伝承や聞き及んでいた姿とはあまりに違い、背も低く、女らしいと言う側面が見当たりませんでしたゆえ、つい」
「そうね、確かに女らしくは無いかしら。でも一応女よ」
(……一応じゃなくっても女なんですけど)
零凛はクスクス笑って言い、私はひたすらムッとしてその様子を眺める。
「答えていただいて無いわね。1人と言うのはどういう意味?それに名前位、名乗ってもいいんじゃないかしら?」
「私の名はカイルと申します、ご質問の答えはそのままの意味です」
「そう、じゃぁ、貴方が侘瑠火を率いているってわけじゃないのね」
「さぁ、どうでしょう?それはご自分でお確かめになられてはいかがです?私と共に侘瑠火に行けばすぐに分かる事です」
カイルはにこやかに笑顔を零凛に向けたが、私はその笑顔に恐怖を覚え、ゾクリと背筋を凍らせた。


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