アナタがいたから…

<Sweet Orange Story

  Life めぐり会う言霊>

侘瑠火 9

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(何だろう……嫌な感じ)
全身に鳥肌がプツプツと立っていくような、変にざわついた感覚が体を駆け巡り、私は私の中で自分を抱きしめ震える。
怖いわけじゃないし。もちろん、寒いと言うわけじゃない。
ただ、その瞳が、笑顔が嫌だった。
コチラの世界にやってきてはじめてのことだ。
モンスターであるガリアンに襲われた時だって、怖いと言う事はあったけど、こんな嫌な感じになることはなかった。
もちろん、鬼龍王の人たちにあったときだってない。
心の底から、それこそDNA自体がカイルの笑顔を否定していた。
ゆっくりと近づいてこようとするカイルを零凛がグッと睨みつける。
「それ以上は寄らないでいただこうかしら?」
零凛の言葉に私は力強く頷いた。
これ以上傍に寄られれば私はなんだか自分が嫌なものに染められてしまう様な気がしていたから。
零凛の瞳と、言葉にカイルが歩みをやめて、また、あの嫌な微笑を向ける。
「おや、どうしてです?貴女を迎えに来たと言うのに」
「そうね、出なければ貴方達がココに来るわけ無いものね」
「フフ、わかっていただけているのなら話は早い」
「アーリーの森の近く、もしかしたらアーリーの力が及ぶかもしれない場所ですもの。危険を冒してまでやってくると言う事はそれしか考えられないでしょ。でも、残念だけど、イヤよ。貴方は嫌いだわ」
「……なんですって?」
零凛がスッパリ言ってのけるとカイルの顔が歪んだ。
そのカイルの表情を見て零凛がニヤリとする。
目の前に敵だろう人がいて、鬼龍王の力も及ばない、私だって、どうすれば良いのか分らない状況なのに笑うなんて私には零凛の考えがまったくわからない。
(こんな時に何?)
当然のことながら私は首を捻る。
不思議に思っていると零凛が更にクスリと微笑を浮かべながら偉そうに上からものを言った。
「あら、侘瑠火のクセに物分りが悪いのね」
「侘瑠火のクセにとはどういう意味でしょう?」
「私はアナタが嫌いだといったの。アナタの上で偉そうにしている人は教えてくれなかったのかしら?」
「……私を滅するつもりか。光麗」
「アナタ次第ね。滅して欲しい?」
楽しむように言う零凛に私を守るように回りを固めていた兄弟達は呆けてしまっていた。
そりゃそうよね……私でさえ呆れてしまっているもの。
(相手がどんな人なのかも分らないのに、そんな挑戦的でいいのかしら?っていうかどうして、この状況で楽しそうにしているわけ?)
私や多分他の兄弟達も同じように思っているだろう時、カイルがニヤリといやらしく笑ってチロリと舌なめずりをした。
「滅せられるのは嫌ですね。でも貴女も侘瑠火を甘く見ているようだ」
「そう?」
「まだ目覚めていない貴女を連れ去るなど私には造作も無い事だ」
クククと怪しく笑ったカイルがスッと手の平を私の方に差し伸べようとし、兄弟達に緊張が走った時、ズンと重たく空気が揺れた。


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