アナタがいたから…

<Sweet Orange Story

  Life めぐり会う言霊>

東の森のアーリー 1

イメージ


ハァハァと息を整え、クッと周りを見てみれば、いつの間にか私は零凛と入れ替わっていたようで、私の叫び声に皆が驚いている。
(あぁ、驚いた。凛はもう少し女らしい、おしとやかさを身につけないと駄目ね)
私の中で囁いた零凛に、当然私はムッとした。
「ふざけないでよ!」
「……り、凛なのか?」
「そうよ、私は凛です!」
唇をアヒルのように尖らせて、私は私に聞いてくる聖君を睨みつけて言い、その様子に零凛が呆れて口を挟む。
(アナタって意外にヒステリーになるタイプなの?だとしたら聖も飛んだとばっちりね)
「くぁあぁ!!全く勝手に出てきて勝手に事を運んで、勝手にやってるのはアンタでしょうが!!」
とにかく、ムカついていた。
私だって、別に聖君のせいだなんて思ってなかったし、当たりたくなんか無かったけど、いい加減にして欲しいって感じがタップリの私はどうしようも無く叫んでしまう。
だってそうじゃない?
別に私が来たいって望んだわけじゃない世界に無理やり呼ばれてさ、伝承とは違うって散々馬鹿にされた挙句、光麗だって言われて、私の体なのに、好き勝手に使われて……。
ウギャ〜!ってならない方がおかしいわ。
口を尖らせ、ギュッと握り締めた手。そしてなぜか、私の頬には温かい涙が伝っていた。
怒鳴り散らしたかと思えば、涙を流している私に回りはどうすればいいのか分からない感じでオロオロしている。
(……もといた世界に、日本に帰りたい)
そんな事を思っていると、ふんわりと翡翠の風が私の足元から螺旋を描いてまとわりついてきた。
(……な、何?)
驚きながらも優しい感じのするその風に胸まで包まれた時、顔のすぐ近くに一塊の風が現れ、ゆっくり人の顔を成して行く。
ジッとその塊りを見ていると、瞼を閉じた優しい微笑を浮かべる男の人の顔に変化した。
「だ、誰?」
緑でフワリと揺らめくその透明感のある顔に問いかければ、優しい声が辺りに響く。
「私はアーリー。元気な光麗。アナタのお名前は?」
「……凛」
「そう、凛。涼やかでりりしく、優しい良い名だ」
翡翠色のアーリーさんはとっても優しくて、ニッコリ微笑まれるだけで何だか騒がしかった胸がスーと静まっていくようだった。
「全く、零凛は相変わらず周りを振り回しているようだね。君も大変だ。大きい子供の御守をしていて」
(ムッ!相変わらずとは失礼な!しかも御守って……フン!)
アーリーさんの言葉に珍しくムカッとしている零凛の言葉と感情に少しおかしくなってフフッと笑う。
「うん、可愛くて良い笑顔だね。君はとても良い子だ」
優しい言葉に私は笑顔が溢れ、グイッと袖で涙をふき取った。
「私は君が好きだよ。凛」
アーリーさんがそう言うと私は後ろから肩をグイッと引っ張られ、バランスを崩して後ろに倒れ掛かり、そのまま何かに背中をぶつける。
「ぅわっ!」
ひっくり返りそうでビックリして出した私の声と同時に私から離れたアーリーさんの影に向かって炎と風と水蒸気、それに木の蔓が降り注いだ。




イメージ上へ
イメージ イメージ イメージ

web拍手 "

応援ヨロシクです♪イメージ
inserted by FC2 system