アナタがいたから…

<Sweet Orange Story

  Life めぐり会う言霊>

東の森のアーリー 6

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「凛がこのままでいいと言うので、このまま話を始めてもよろしいですか?」
アーリーさんの言葉にクッと体をアーリーさんの方に向けようとした豹君の肩に泪さんが手を置き、豹君をソファーに座らせ、コクリとアーリーさんに向かって頷く。
「弟達が失礼を……。お話をどうぞ」
ニッコリ微笑む泪さんですら、その瞳はどうみても挑んでるように見えて、私はチラリとアーリーさんに視線を動かし様子を見たが、当のアーリーさんは気にする素振りも見せず話し始めた。
「さて、私がこの森から出ていない理由ですが」
「あ、そういえば、そんな話だっけ」
(……お馬鹿)
すっかり忘れていた私はそんな返事をしてしまい、またしても零凛のいやな呟きを聞いてしまう。
全く、違う人物が自分の中に居て、それがまた、自分を馬鹿にしてるんだから面倒で嫌な感じ。
「この世界から光麗であった零凛が去り、私はこの東の森へと身を潜めました。来るべき時の為に」
「来るべき時?アーリーさんは侘瑠火が現れてこうなる事が分っていたの?」
「いえ。私ではなく零凛が」
「零凛が?(ふ〜ん、零凛って予知能力でももってるの?)」
(……本当にお馬鹿ね。予知能力じゃないのよ)
「む!さっきからお馬鹿お馬鹿って馬鹿にして〜!」
私がつい、声に出して言えば、アーリーさんはフゥと溜息をついてチラリと私を見た。
「零凛、アナタと言う人は…出てらっしゃい。話が前に進みません」
(煩いわね〜絶対出て行ってやんない)
「あの〜絶対出て行かないって言ってますけど?」
「では、黙ってらっしゃい。後で引きずり出しますから」
(……)
零凛ってアーリーさんに何か弱みでも握られているのかしら?そう思うほどに零凛はアーリーさんの言う事を良く聞く。
静かになったのを見計らって、アーリーさんは続きを話し始めた。
「当時の光麗だった零凛が、このような状況になるかどうか分っていたか、光麗として凛が召喚されるとわかっていたかどうか、それは不明ですがDarkSideAngel(ダークサイドエンジェル)が封印を解いてしまうかもしれないと危惧していました。そして私にお願いをしてきたんです。時空の力を使って遥か未来まで生きてくれないかと。そこで私は別の空間に別の時間軸で過ごせるこの空間を作り出しました……」
「じゃぁ、アーリーさんはずっと、ココで?」
「この空間とこの森を私は出る事が出来ません。出れば今までの時間の波が一気に私の体に押し寄せて私は影も形も無くし、一片の骨すら残らずこの世界から消えてしまいますから」
「そんな……それじゃ、ココにこれからもずっと?」
私が聞くとアーリーさんは微笑んだままコクリと頷く。
「そうですね。零凛がそう望み、私の運命がそうであれば恐らくこれからもずっと……」
「……酷い」
私は思わず呟く。
誰でもなく、そうしろと言った零凛が酷いと思った。
長い時間、たった一人でこの場所に留まり、外に出る事すら出来ない。結界を張ってからは多分、誰もココを訪ねていないから本当に1人だっただろう。
そして、この場所を出れず、これから先もずっと、永遠にこの空間にたった一人で生きていかなきゃならない。
私だったらきっと耐えられない。向こうの世界で1人だったけれど、それでも友人は居たし、友人でなくても人と言う存在を身近に感じられていた。
自分以外の誰の存在もない、気配すらない場所に閉じこもるなんて。
零凛はどうしてアーリーさんにこんな酷い運命を背負わせたのだろう。酷すぎる。
(仕方なかったのよ……空間の力を持っていたのはアーリーだけだったから)
「そして自分はサッサと日本に戻ったって言うの?身勝手だわ……」
「……零凛には零凛の、そして私には私の使命があった。それだけです」
私の言葉にニッコリ微笑むアーリーさんの姿に私はいつの間にか涙をこぼしていた。






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