アナタがいたから…

<Sweet Orange Story

  Life めぐり会う言霊>

東の森のアーリー 7

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【それだけの事】そういえるアーリーさんの気持ちは今の私には全然分らない。
ポロポロと涙が目から溢れてくるが、それは悲しみの涙と言う訳では無い様な気がしていた。
自分の感情なのに、自分ではそれが何か分からず、制御する事も出来ない私はハッとする。
見れば自分の周りに居た兄弟皆が心配そうな視線を私に向けていた。
「(いけない!また心配させてる……)」
慌てて涙を手で拭ったけれど、次から次へと溢れ出す涙は自分で止める事ができなくって、どうしようかと焦り始めた時、フワリと私の頭に白く柔らかい布がかぶさり、頭の中にアーリーさんの声が響く。
<涙を止める事はありません。それはアナタの今の感情。抑える必要は無いんです>
「(でも……)」
<大丈夫、彼等にはちょっと席を外していただきましょう>
優しく響く声と一緒にアーリーさんは私の肩をそっと撫でてくれ、それだけで少し落ち着いた。
「凛……」
聖君が私に近づこうとした瞬間、アーリーさんがスッと片手を上げてニッコリ微笑んだ、その瞬間、目の前の空間がグニャリと歪んで、歪んだ空間に兄弟達が消えていく。
「なっ!何を?!くそ!凛!!」
叫んだのは燿君で、立ち上がって私の方に手を伸ばしたけれど、届く事無く、歪んだ空間は皆を飲み込んでいった。
「え?あ、えぇ??」
驚きのあまり涙は一気に引っ込んだ。
歪んだ空間が再び先ほどと同じ風景を取り戻したとき、そこに兄弟達の姿はなくなっている。
「ア、アーリーさん?」
私の頭の中によぎったのは、この人はアーリーさんの姿をした侘瑠火なんじゃないかってこと。
だって、味方がそんな事するわけ無いって思うじゃない?
驚いた瞳で見つめれば、アーリーさんは微笑を絶やさず、フワリと私を横抱きにして立ち上がる。
逃げようと、もがきかけた私に零凛が静かに言った。
(平気よ……彼はアーリーだから。他の何者でもないアーリーだから)
「で、でも……皆が……」
零凛に聞く私の言葉にアーリーさんが私を見て言う。
「彼等には彼等のステージを用意しています。そして、アナタにはアナタの……」
「皆には皆の?私には私の?」
「そう、分ったでしょう?今の彼らの力で侘瑠火に向かおうと言うのは無謀だと言う事が」
確かにアーリーさんの言う通り、魔物達を軽々と倒してきていた皆の力でさえ、あのカイルに軽くいなされてしまっていた。
「彼等にはココに居る間にもっと強くなってもらいます。ココは私が長くいた事で霊的な力が強く、そして何より時間軸が外の世界とは違う。極限まで力を高めてもらいましょう」
「危ない事は……ないですよね?」
「大丈夫。死にはしませんよ」
「(死にはって……)」
何だか怖い事をサラッと笑顔で言ってのけるアーリーさんは、私を抱いたまま部屋を出て、エントランス中央にある階段で2階へと上がっていく。
「あの、私はドコに?何をするんですか?」
「先ず、零凛を引っ張り出します」
(ゲッ!何よ!私を出したら凛が未熟者に逆戻りするだけなんだから!)
「……あの、引っ張り出したら私が未熟者に逆戻りするとか言ってますけど」
「あぁ、そうでしょうね。でもココには決して侘瑠火は入れませんから、未熟者に戻っても大丈夫ですよ」
「(本当に似たもの同士と言うか……2人して私を馬鹿にして)」
2人に未熟者扱いされた私はなんだか面白くなくって、プクッと頬を膨らませ、気分を害していた。






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