アナタがいたから…

<Sweet Orange Story

  Life めぐり会う言霊>

オセロな気分 10

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オルタはフワリと頭一つ分、私より上に浮き上がる。
その動きに合わせるように私が上げた顎をつかんで、ニッコリ微笑むオルタは見た目はガキの癖にその笑顔は優しい大人の男といった感じ。
(ウッ、また心臓がやばい)
この世界に来てから何だかモテ期がやってきたかのように男性陣に囲まれる私は、未経験の連続に多少のことでもうろたえてしまう性質が出来上がってしまってきているようだった。
ムッと口をつぐんで力を込め、必死で揺れる自分の気持ちを留めようとしていると、オルタが私の額にそっと唇をつける。
「ふぎゃっ!また」
なれない空間でバランスを崩しながら後ずさったが、私の腕はしっかりオルタに掴まれていて、あっと言う間に引き戻された。
「逃げるな、聞きたくないのか?」
「な、何を…」
フフンと相変わらず偉そうに見下ろしてくるオルタの首の辺りを睨みつける。
「お前がこんなに初心だという事は、穢れが無いという事だ。多少、心配していたがそれはそれでよし」
「穢れ?それって、私が男性経験が無いって言いたいわけ?」
「実際、そうであろ?」
「うぐっ…。キ、キス位はあるもん」
「ほう、それは意外」
「う、うるさいなぁ!で、それが何の関係があるのよ!穢れがないってのと、オルタが心配していたって事に」
クスクス笑うオルタにプイッと顔を背けて頬を膨らませれば、オルタは右手を私の腕から離して手の平に小さな黒いもやもやとした珠を作り上げた。
「何?」
「まぁ、黙って見ておれ」
オルタは手の平に現れた珠を私の心臓の上辺りの肌に押し付ける。
黒い珠はゆっくりと私の肌に染込むように浸透し、全ての珠がオルタの手の平から消えたとき、私の心臓がドクンと大きく鼓動した。
心臓の鼓動は喉からそれが飛び出してくるようで思わず私は胸に手を当てる。
「何をしたの?」
額から冷や汗があふれ出てきて、私の中で何かが暴れ始めるのを感じ、息遣いが荒くなっていく。
「それはちょっとした穢れだ」
「け、穢れ?」
「人であれば必ずしも持っている穢れ、当然、アーリーも他の鬼龍王の若造も、そして零凛も持っているものだ。だが、お前は持っていない……」
「え?」
「お前は持っているべきモノを生まれながらに持っていない。人との肉体的接触があればゼロであろうとも少しはあったかも知れぬが、それも無かったから無いのだ」
「い、意味が分からないんだけど……」
締め付けられ、引き裂かれるような痛みに苦しみだけが私を襲い、眉間に皺を寄せたままオルタを見つめれば、オルタは再び私の心臓の上に手を置き、私の中に浸透させた【穢れ】をゆっくり引き抜いていった。



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