アナタがいたから…

<Sweet Orange Story

  Life めぐり会う言霊>

オセロな気分 11

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抜け出した靄のような黒い珠をオルタはその手で握り締めて、珠ははじけるように壊れる。
ハァハァと何度も肩を上下させて息をすれば、私の苦しさはゆっくり収まっていった。
私の呼吸が落ち着いたのを見て、オルタは再び今度は黒光りする本当に漆黒と言う黒い珠を作り出す。
「ちょ、ちょっと!」
あの苦しさはもう御免だと思った私は両手で漆黒の珠を出現させたオルタの右手首を握って拒否しようとした。
しかし、オルタはどこにそんな力があるのかと言うほど強い力で私の力を押し返して私の胸に漆黒の珠を押し付ける。
「うっ!」
珠は吸い込まれるようにそのまま私の体の中に入っていき、苦しさを覚悟して私は瞳をギュッと閉じた。
体の中に入ってきた漆黒の珠はゆっくりと飴玉を溶かすように私の体の中で解けていくのが分かったが、苦しさは全く無い。
よく似た黒い玉だったはずなのに、痛みを伴わないことに私が首を傾げればニヤリとオルタは笑った。
「もし、この玉を零凛に入れたのならば意識体だけのヤツは存在すらなくなるだろうな」
「え?こんなになんとも無いのに?」
「それはお前だからだ。これが鬼龍王の若造でも、アーリーでも同じこと。肉体を持っているやつらのほうが零凛よりも苦しみは数倍だろう」
「意味が、わからないわ。それじゃまるで、私と彼らではまるで違う人間だといわれてるみたい」
「いわれてるみたいではなく、そう言っているのだ。本来なら口で説明がつくことだが、お前はこの世界の人間ではないからな。言って理解すること無いだろうからやってみせた」
オルタは私からススッと遠ざかり、何も無い場所に椅子があるかのように腰を下ろして、足を組み、フフンと鼻で笑う。
その笑いは、今の私をイラつかせるには十分な材料で、どう考えても怒らせようとしているようにしか見えない。
怒鳴りつけたい気分を抑えて、唇をへの字に曲げるだけにした私だったが、イライラが募れば募るほど私の体は安定を失って、再びコロコロと体が転がり始めた。
「な、ちょ、これって何?!」
ワタワタとまるでプールでおぼれているように手足をばたつかせて言う私の耳に、アハハと大きく楽しそうに笑うオルタの声が聞こえる。
「感情豊かなのは結構だが、あまり感情を揺さぶりすぎると、揺さぶりに合わせて体の回りの空間がゆがんで、体が安定しなくなるから注意したほうがいい」
「ハァ!?そんな情報今までどこにも無かったけど?」
「当たり前だろ。言ってないもの」
「ふ、ふざけんな、クソガキ!」
「まったく、口の利き方を知らないのもいいが、言葉が汚いのは駄目だぞ。一応女だろ?」
「い、一応。失礼な」
「男を色香に惑わせたこともないのだろう?20歳を超えているのに」
ケラケラと笑うオルタの言葉に憤慨すればするほど、あたしの体は定まりをなくして、その場に回転し始める。
(や、やばいような気がする。どうやってとめればいいの?!)
回転速度はコーヒーカップを馬鹿みたいに回してる感じで、乗り物酔いのように気分が悪くなり、もうこの場で吐いちゃおうなんて考え出したとき、オルタが私の足首をつかんで回転を止めた。




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