HARU 1
「……そろそろ、観念して欲しいんだけど」
鈴の音のような涼やかな声が暗闇に響き渡る。
「き、貴様…何故この世界に居る?」
苦しげなダミ声がその暗闇に同じ様に響いた。
「居るから居るんだ。それ以上でも以下でもない」
「しかし、貴様は!」
「私の存在がどうのとかそんなの今関係ないじゃん?アンタが観念してくれたら私はコレを使わなくて済むんだけど」
「クッ、……何故だ、何故……」
「私に言わないでよ。私だって好きでこんな事しているわけじゃない」
少女はキッと目の前の男を瞳の色が違う左右の目で睨みつけて言う。
「で、どうするの?最後通告。このまま滅されたい?それとも私の下につく?」
不機嫌な少女は手に持った青く輝く日本刀を男の喉元につきつけて聞き、男はフゥと溜息をついた。
「……分った、お前の血を貰おう」
「さっさと言ってよね。私だって暇じゃないんだから」
ひれ伏すように方膝をついて言う男に、少女はそう言って、青く光る刀で自分の手の平を切る。
ツツッと流れた真っ赤な血液は少女の指から上を向いている男の口中へと滴り落ちた。
コクリ、コクリ……
男の喉仏が2度ほど上下し、少女の血をすすった男はカッと目を見開いて体を硬直させる。
一瞬、ボッと枯草に火が付く様に男の体を蒼い炎が包み込んで暫し燃え滾った後、男の体に吸収されるように収束し、男の体はゆるりと力が抜けた。
傷だらけだった男の体は綺麗に治り、赤く輝く瞳で少女を見上げる。
刀でつけた手の平の傷を自分でペロリと舐めとり、傷に蒼く光る刀身を押し当てれば、その傷はまるで無かったかのように消えうせた。
チラリと金色の左目で男を見て少女は口の端を少し上げて微笑み言う。
「じゃ、行こうか」
「はい、ご主人様」
「ククク、止めてくれよ。ご主人ってガラじゃ無い」
「血の契約を結んだ以上、俺はアンタの下僕だ」
「言っただろ?ガラじゃない。この世界での私の呼び名はハル」
「では、ハル様で……」
「様は無しだ。ハルでいい。敬語もなし」
「それは命令?」
「ふぅ、本当に面倒だな〜お前って。そうだ、命令だ。従え」
「OK。ハル」
ニッコリ微笑んだ男の笑顔に面倒臭いといった表情をしたハル。
深夜の深い闇の中を2つの影は夜にもかかわらず明るく輝いている街へと向かって歩いていった。


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