HARU 2
ジリリリ……
街の一番外れにある古びた洋館に目覚まし時計の音が鳴り響き、明るい日の光が部屋の中に差し込んで、ハルは布団の奥へと潜り込んだ。
モゾモゾと布団の中で丸まって、再びゆっくりと二度寝の気持ちよさに身をゆだねようとしていたハルの布団が突如剥ぎ取られる。
「ぁヴ!」
「ハル、朝は起きるんじゃなかったのか?」
自分の体の上から無くなる布団に手を伸ばして言葉になっていない声を出したハルに静かな声が降り注いだ。
眉間に皺を寄せ、しかめっ面で声の主を睨みつけたハル。
「起きる……けど、まだ寝る」
「何を言ってる。サイには、ハルは朝起きて、学校とやらに行くと聞いているぞ」
「行く……けど、まだ寝る」
「嘘つけ。サイに起こして来いって頼まれたんだぞ?寝るのはおかしいだろう」
「……おのれ、サイめ」
「早く起きろよ。ハルが起きてくれないと俺がサイに怒鳴られるんだからな」
「ダース、サイに逆らってみたらどうだ?」
「アホか。アイツ切れるとろくなこと無いんだぜ。俺は面倒は嫌いなんだよ」
ニヤリと笑って言ったダースに、ムッと不機嫌に瞳を開けて、渋々布団から起き上がったハル。
真っ直ぐで長い黒髪は、腰を通り過ぎてふくらはぎ近くまであり、前髪は真ん中から分けられて左目の方だけ耳にかけて瞳が覗いていたが右側は髪の毛を垂らして瞳は見えなかったが、その奥には翡翠色の瞳があった。
ペタペタと足音を立てながらハルは自分の部屋からサイの居る食堂へと向かい、その後ろからダースが続く。
食堂のドアを開ければ、そこには仁王立ちをしたサイが居た。
少しくせっ毛な金髪を後ろで1つにまとめ、背の高いサイは見下ろすようにハルを見つめて言う。
「遅い、遅いですね」
「煩い、煩いですね」
サイの言葉を真似するように言ったハルにサイの眉はピクリと上がって、ハルはニヤリと笑った。
その様子を見て取った、サイはニッコリ微笑む。
「私を怒らせようというのであれば無駄ですよ。私だって学習しますからね。全くアナタはろくなことを思いつかない」
「チッ」
「さぁ、早く朝食を食べてサッサと学校へ行ってください」
コレでもかと言う微笑を自分に向けてくるサイに、コレはもうダメだと諦め、ハルは朝食を食べ、セーラー服に着替え、背中に日本刀を背負って学校へと出かけた。
ハルを見送ったサイは、ダースに視線を向けてニッコリ微笑む。
「さて、では、ダースには屋敷の掃除を頼もうかな」
「……言われればやりますけどね。その前に、少々説明してくれてもいいんじゃ無いのか?」
「おや、まだ聞きたい事が?」
「ホント、ムカつくよな〜だから嫌いなんだ聖の属性を持ってるヤツは」
「フン、私だってね、魔の属性とは合わないんですよ」
「お互い様って事か。にしても、アンタの方が俺より先にアイツに服従してんだろ?アイツは全然教えてくれないからな。アンタに聞くしかないんだ」
「それが聞く態度とは思えませんが……仕方ない。教えましょう」
仕方が無いと言いながらも、その表情はとても面倒臭そうにサイは家の中に入り食堂の片づけをする為に廊下を歩きながら話し始めた。


応援ヨロシクです♪
