Evil.Umpire

<Sweet Orange Story

  Life めぐり会う言霊>

HARU 4

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「創世の書は持ち主を選びます。故にその鞘を抜く事は連中には無理でしょう。しかし、大きな力です。持ってるだけでもその力の一部はその者に与えられてしまいます」
面倒臭そうにいい加減にモップを動かすダースを睨みつけるようにしてくるサイに、ハァと溜息混じりに少し真面目にモップをかけながらダースは言う。
「そりゃま。創世の書の刀の鞘が引き抜かれたらそれこそ終末どころの話ではなくなるからな。世の理から全てがぬりかえられちまう。あぁ、そうか、それでトップ連中はハルに救いを求めたわけだ」
「そうです。そうなって慌てた私達の頂点の方々はこの事態をどうにかできるとすれば、終末の地の主しか居ないと2人連れ立って、終末の地の主のハルを起こしに行ったんです。黙示録を持って」
「ハルが黙示録を取りに来れば終末の最終決戦の合図だよな?でも、黙示録を持って逆に起こしに行ったってことは?」
「はぁ……上位魔族とはこの程度の者なのでしょうかね〜」
「いちいち、ムカつく奴だな」
「知らなさ過ぎるからでしょう?黙示録を持って起こしに行くこと、それは終末回避の為に聖と魔の頂に立つ者に許された行為。2人の鮮血によって管理者は目覚めます。「そうして目を覚まされた管理者はハルとなり、蒼い火を放つ黙示録をもってココに存在するわけです」
「なるほどね。困りに困ったトップが匙を投げた先にコツンと当たったのがハルってわけだ」
「もう少し言いようがあるでしょうに……」
「で、ハルは何をさせられるんだ?」
「……させられてるわけでは無いんですけどね。起こされたハルには終末回避の使命があります」
「ってことは……その聖と魔の均衡を破ろうとしてる奴らの抹殺って所か?」
「ですから、もう少し言いようがあるでしょうって言ってるんです」
「ん?違うのか?」
「ハルは言ってみれば裁定者。全てを滅するわけではありません。見つけ出す事は見つけ出しますが、その後の裁定はその者次第なんです」
「じゃ、俺はその手伝いをするって事か」
「手伝いをするのかどうかは知りませんが、利用価値があるとハルに判断されたと言うところでしょうね」
「利用価値?俺に?」
「本当に、ドコに利用価値があるのか私にはサッパリわかりませんが、私がハルに血を頂いた際にハルは『お前は使えるから使ってやる』っていいましたからね。恐らくそう言う事だと思いますよ」
「ふ〜ん、ま、俺は現状を楽しむってのがモットーだからな、その辺はどうでも良いんだけど」
モップをトンと元あった部屋の隅に放り投げ、フフンと腕を組んで机に腰を下ろしたダースにサイがフッと息をかければ、ダースの体はサイが発したキラキラ光る風に押されて床にしりもちをつく。
「痛ぇ〜、何すんだよ!」
「机は座るものではありません。それに、まだこの屋敷には掃除をする場所は沢山ありますからね、頑張っていただかないと」
ニッコリ笑って言うサイに嫌そうに顔をゆがめたダース。
「ったくよ〜。だから、真面目ちゃんは苦手なんだよな」
「おや、はむかわないんですね。アナタは」
「俺はね、分をわきまえるほうなんだ。敵わない相手にはむかうほどバカじゃ無いんだよ」
「……上位魔族と言うのは嘘ではないようで」
「聖の属性は嘘をつくが、魔の属性は嘘をつけないように作られてるからな。アンタは聖の属性の中でもかなりの上の位置にいるだろう?ご命令にはさからわねぇよ。面倒な事も嫌いだしな」
ダースは手を振り、再びモップをもって部屋を出て行き、サイはヤレヤレと庭の手入れへと向かった。



 
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