Evil.Umpire

<Sweet Orange Story

  Life めぐり会う言霊>

HARU 5

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ハルの住んでいる町外れの洋館から街の中心へ向かえば、ハルの通う女子高がある。
女子高ではあるが、壁を隔てて隣の敷地には男子校があり、ただ壁で仕切られた共学と言う感じだった。
今時の女子高生とは風貌も雰囲気も全く違うハル。
この学校に編入してきてから友人といえる人物は居らず、どちらかといえば触らぬ神にと言った感じで避けられているのが殆どだった。
だが、その状況はハルにとって好ましい状況で、居心地はすこぶる良い。
何をしようとも、あの口うるさいサイの小言を聞かないで済むと言うだけでもウキウキしていた。
元々授業を聞く為にきているわけでは無いから、前でしゃべっている教師の言葉は聞く必要は無い。
ボンヤリと夜へと向かっていく外の景色を眺めていた。

ハルはどんな時であろうとも背中に日本刀を携えている。
ハルの日本刀の名は黙示録。
鞘の色は蒼穹の色で、角度によっては漆黒にも見える不思議な色を放ち、銀色の透かし鍔、柄糸は真紅で柄頭にはオーロラ色に光り輝く玉があった。背中に携えてはいるが、通常の人にはその存在は見る事は出来ない。
もちろん、ハルは人ではないが、生活そのものは人であり、たいした違いは無かった。

ボンヤリと暇な一日をいつも通りに過ごしていたハルだったが、午後の授業の途中、黙示録がボワリと燃え揺れ始める。
黙示録が燃える時、それは近くにこの世の理とは違うモノが存在していると言う事。
ニヤリと笑ったハルは自分の髪の毛を一本引き抜き、自分の姿を模らせて、その場に残し、自分は徐々に空気に溶け込み姿をその場から消した。

再びハルが姿を現したのは保健室。
初めに目元だけが空間に浮かぶように現れ、周りの景色を確認し、体全体を現す。
(ドアに鍵、パッと見、誰も居ないように見えるが……気配はある)
音を立てないようにゆっくり黙示録を鞘から抜いて、右手に構えた。
(準備室じゃ無い。ベッドのカーテンの向こうか)
保健室に設置されている3つのベッド。窓際のベッドに気配を読み取り、ハルは気配のするベッドの反対側のベッドに近づく。
頭だけカーテンをすり抜けさせて白いカーテンに囲まれた中を見てみれば、そこにはこの学園の制服を着た男子生徒が青い顔をして横になっていた。
(ま〜場所が場所だからな、こんなヤツが寝ててもおかしくは無い。だが、コイツは違うな。喰われたか。人間って本当にバッカだな〜)
フワッと体を床から数センチ浮かせたハルは、そのままカーテンをすり抜け、青い顔をした男子生徒の上を通り過ぎ気配がするベッドの隣のベッドを覗く。
そこにも青い顔をした男子生徒が1人。
(……なんだ男ばっかりだな。あ、そっか、ココは男子校の方か。構造はそのままで、いるのが男か女かの違いだから分り辛いんだよ)
ムゥ〜と口をアヒルのようにしながら、その男子生徒の上も通り過ぎ、気配の揺らめく窓際のベッドに近づいた。
(さて、お食事中ってところだろうな〜。このまま覗いてもいいけど、できれば何者か知ってからの方が良いよな〜。んと……)
上を見たハルは、カーテンレールと天井の隙間から、覗く事にしてフワリと体を浮き上がらせ、上からカーテンの中の様子をうかがう。
ベッドには男子生徒が1人と、その上に覆いかぶさるようにして4枚の白い羽を時折揺らす女が居た。




 
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