Evil.Umpire

<Sweet Orange Story

  Life めぐり会う言霊>

HARU 8

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「ハァ、何だ、こんな事も知らないほどの下等だったのか」
ハルはガクリと肩を落として深い溜息をつき、手に持った本を机に置きなおして、スタスタと出口へ向かって歩き始める。
先ほどまでの戦いの雰囲気とは打って変わって、なんだか沈んだ感じのする雰囲気に、戸惑うリラは背中を向けて歩いていくハルに腕を伸ばした。
「ちょ、ちょっと!ドコに行く気!!」
「やる気、無くなった」
「はぁ?!」
「オバサンはさ〜必要ない生気まですってるだろ?生体を保つなら1人で十分なはずなのに、3人分やっちゃってるし。バランスが取れない存在だから狩りとらなきゃいけない、それにアンタの後ろで隠れてる奴の情報を仕入れるつもりだったけど、アンタみたいな下等の馬鹿を狩ってもしようがない気がするから逃がしてあげるよ。特別だかんな」
「な?!下等な馬鹿?しようがないですって?!」
「うん、馬鹿で無知なヒステリックババァなんて別にどうでもよくなった。たぶんアンタ、裏にいる奴にとっては捨て駒だろう。捨て駒に重要なことを言う馬鹿はいないからな。聞いてもたいした情報は持ってなさそうだから。んじゃ、せいぜい食べ過ぎに注意しろよ」
ハァと溜息を1つついて保健室のドアをガラリと開け、外に出て行こうとしたハルの顔はボスリと何かやわらかいものに埋まってハルは足をとめた。
「……なんだ?やわらかい壁か?」
呟いて、踵をかえし、窓から出ようとしたハルの首根っこがつかまれる。
「あ、あり?」
「『あり?』じゃありませんよ!ハル!アナタわかってて無視しましたね」
「サイ……」
「俺も居るぜ」
首根っこを掴まれたまま視線を後ろに向けてみれば、サイの後ろからダースが顔を出した。
サイはハルを掴んだまま、ダースはサイに続いて中に入りリラの方に視線を向ける。
「ハルピュイア、ハーピー系?」
リラを指差してダースはハルに聞き、ハルはムッと口を尖らせて不機嫌に頷きながら答える。
「ん。ハルピュイア系天使血族だと」
「へぇ〜天使血族って事は交わったのか〜、鳥女と。良くやるなぁ〜ハルピュイアと交わるなんて俺には無理だ。さすが天使様々」
「我等の種族を馬鹿にするのか!」
ダースの言葉にリラはカッと怒りの声をあげ、その声にダースはニヤリと笑った。
「馬鹿にしているわけじゃ無いさ。でも、俺だったら意地汚い下品な奴を相手にはしないって事。だから、そんな奴の相手をしてやった天使様ってか聖の属性の奴のボランティア精神ってのは凄いな〜って」
クククと堪え笑いをしながら言うダースに、未だハルを掴んだままのサイがじっとりとした目をして言う。
「ダース、蓼(たで)食う虫も好き好きっていう言葉をしってますか?」
「あ?何だそりゃ」
「聖の属性にも色々居るんです。あぁいうのが好みだと言うのもたまには居る。一括りにしないで頂きたい。勿論私はそんなボランティア精神を一切持ってませんから、あぁ言うのはごめんですけどね」
「そう?アイツは鳥女の仲間にしては見た目はまだマシだから行けんじゃないの?」
「冗談でしょ?!あんな腐臭を放ってるモノの相手をするくらいなら死んだ方がマシです」
「ククク、そりゃそうだ」
アハハと大きく笑ったダースはピクリと目じりを動かして、左手をサッと差し出し、手の平から一陣の風を巻き起こした。
その風は左側から襲ってきていた銀色の羽を巻き込んで弾き飛ばす。
「おぃおぃ、行き成りは無しだろ?」
ニヤリと笑って横目でリラを見たダースは左手をおろし、腕を組んでリラの方へ向き直った。




 
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