Evil.Umpire

<Sweet Orange Story

  Life めぐり会う言霊>

HARU 10

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目の前で金色に光り輝いたリラの繭はその光を翼の内側へと集中させていく。
「ほぉ、天使の血族というのは間違いないようですね」
「なんだありゃ?」
「あれは聖の属性の力ですよ。私にもできますが、こんなことで使ったりはしませんけどね」
「何でだ?」
「言ってみれば最終手段。己の体を変化させ、普段とは比べ物にならない力をひきだすのです。その代わり、体が元に戻るかどうかは保障できませんけどね」
「ふぅん、ま、いっか。やる気になったんだったらこっちもやってあげようかな」
やれやれといった感じに頭をかいて、ハルは再び先ほど置いた本のところへいき、本を手に取った。
そのとき、パシーンという音とともに、リラの翼がはじけるように開く。
そこには、先ほどまでの人間の姿形はなくなり、白い大鷲のような姿をしたリラが鋭い視線を本を手にしたハルに向けていた。
2人の様子を部屋の隅で見ていたダースがつぶやく。
「へぇ、そこまで変化できるんだ」
「ま、元がハーピーですからね。あの程度でしょう」
「ってことは、サイはもっと変化できるってことか?」
「それ相応に。私も上位天使の一員ですから。それより、彼女のことはハルに任せて、こちらをどうにかしましょう」
サイはリラがむさぼりつくし、変質してきている男子生徒のベッドへと歩きながらダースに言い、ダースは横目で2人を見ながら後に続いた。
リラは視界にハルを映したままバサリと大きく羽ばたく。
「また本か。そのようなものでどうしようというのだ?」
「管理者に与えられた特権とでも言うのかな。私は文字の書かれたものから武器を生成することができるんだ」
ニヤリと笑ったハルは左手に持った本をリラに向かってかざし、ゆっくりとその本に右手を埋めていった。
突き抜けることなく、本の中に溶け込むようにハルの右腕は吸い込まれ、ドクンと本が鼓動しはじめる。
(……本が、鼓動している?メギドの管理人にこのような力があるなど聞かされていないぞ)
ドクドクと本の鼓動が早くなり、ひときわ大きな鼓動が部屋に響き、ハルは右腕を本から引きぬけば、その手には真っ白なサーベルが握られていた。
「なっ?!」
「ふん、ま、量産型の本のようだからな、この程度の武器で当然か……」
「本当に、本から武器が」
「私は別に聖の属性じゃないんだ。嘘つくわけ無いだろ?昔ならすべての本や石碑は手作りで作り手の思いや読み手の思いが込められてて、もっときちんとした武器が本からも石碑からも手に入ったんだけど、今の世はどうやら同じようなものが沢山出来る量産型が多いからこの程度の武器しか手に入らない。それでも、アンタには十分すぎる武器だよ」
「ふざけるな!!」
叫んだリラは大きく開いた翼の羽、一つ一つを尖らせ無数の槍のようにし、カッと目を見開き、ハルに向かって突進してくる。
左右の翼を交互にハルに突き刺すように攻撃するリラ。
本から生成した白いサーベルを構えるハルは左右から襲ってくるとがった翼をサーベルではじいて防ぎ、後ずさった。



 
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