Evil.Umpire

<Sweet Orange Story

  Life めぐり会う言霊>

MINOU 1

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数日、ピリピリと警戒するサイと少しだけ警戒するダースに対して、ハルはいつも通りつまらない日常を送り、つまらない雑魚を始末する。
真昼間から現れるのは聖の属性。夜も更けると魔の属性が現れた。
ハルの通っている学園は龍脈と呼ばれる大地の力の通り道となっており、街中よりもずっと聖魔が集まってくる為、昼間は学生として、夜は散歩がてらにハルはこの学園に来る。
ハルも臭わない敵というわけのわからない存在が気にならないわけではなかったが、心配しても無駄なことは心配しない性質。
相手がわからないのに、あれこれ悩むのは馬鹿馬鹿しいと思い、それに何より、黙示録を持った自分にかなう相手がいるとは思えずにいた。実際、黙示録を使うまでもなく倒せる小者ばかりだった。
本来、学生生活をする必要などないハルにとって、この学園に来ている理由は聖の属性のやつらの動きを察知する為。
「…マジで退屈だな」
ポツリと教室の窓際にある自分の席について窓の外をぼんやり眺めながらつぶやいたハルの目の前にプリントが置かれ、ふっと影が机に落ち、ハルは目だけを動かして影の本体を見る。
そこには腕を組んで偉そうな面持ちの男性教師が1人。
「何か用か?お前」
面倒くさそうに言うハルに男性教師は眉間に皺を寄せた。
「あのね〜木戸さん。お前じゃなくって、巳能生(みのう)先生でしょ」
木戸とはハルのこの学校で苗字。この学園の中でハルは「木戸ハル」と名乗っている。
巳能生はこのクラスの担任で、数学の教師。
背が高く、さわやかなその風貌にただでさえ男っ気のない女子高では、すばらしく生徒の人気は高い。
ただ、そんな巳能生はハルにとってはいつも女をはべらせている野郎というイメージしかなく、どちらかといえばハルが苦手なタイプだった。
ハルの机の上に置かれたプリントを巳能生が指差して言う。
「これはこの前のテスト。呼ばれたら取りにこないと」
「呼んだのか?気づかんかった。これがどうかしたのか?」
「はぁ……君だけだよ、0点で、しかも何も書かずに提出するなんて」
そういわれて机に置かれたプリントを見てみれば、はねられた赤い印にプリントの中央にデカデカと『0』の文字。
0点と聞いて、クラスの数人がくすくすと笑ったが、ハルの視線がゆっくりと教室の隅から隅に動いていけば、その笑い声も静かになる。
長くさらさらとした黒髪に左右の色の違う瞳。
その風貌だけでも誰もが何もいえない存在なのに、その視線が鋭く突き刺さればクラスメイトでなくても誰もが黙り込む。
フンと鼻で息をしたハルは、巳能生が指差したプリントを手に取り、巳能生の目の前で細かく破いた。
「なっ、何をするんだ!」
空中に舞い散る0点のプリントを眺めてあわてて巳能生が言えばニヤニヤとハルは笑い、その態度に巳能生はムッとしてハルに怒鳴る。
「反省するならまだしも、その反抗的な態度、ゆるしませんよ!」
「別に許してもらおうとは思わんから良いけど」
「何にしても!今日はきっちり居残ってもらいますからね!!」
「残念ながら、そんな暇はないから遠慮しておく」
「問答無用!!」
巳能生はとにかくイライラとした態度でそう叫び、怒ったまま授業をはじめ、ハルはふぅとため息をついて(居残りさせられる前に逃げてやろう)と思っていた。


 
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