Evil.Umpire

<Sweet Orange Story

  Life めぐり会う言霊>

MINOU 2

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授業が終わり、巳能生に見つからないうちに帰ろうとしていたハルの目の前に巳能生が現れる。
「木戸さん、どこに行くのかな?」
「便所に……」
「帰るつもりだろう?逃がさないよ」
ハルが言い終わる前に言った巳能生はにっこり微笑んで、ハルの肩に手を置き掃除の始まった教室をつれて出た。
ガッシリと掴まれ、肩を抱いて歩いていく巳能生に逃げ出すこともできず、放課後になった学校には人の目が多く、術を使うこともできないでなされるままにハルはついていく。
女子生徒のうわさの人である巳能生と歩けば、構内の女子生徒達の痛いような視線が注がれた。
(面倒だな人間って)
ジッと巳能生とハルの様子を遠めに見つめる者、ハルを睨み付ける者、そして、巳能生に話しかけてくる者。
どれも発するオーラは同じ。恋と嫉妬。
そんな女子生徒の様子を知ってか知らずか巳能生は寄ってくる女子生徒に笑顔で対応して進んでいく。もちろん、その間もハルを逃がさないようにとしっかり肩を抱いたまま。
(男と女が存在する意味は子孫繁栄だ。恋だの愛だのはその付属品に過ぎんのに人間というのはご苦労なことだ)
巳能生に軽くあしらわれ、去り際にハルを睨み付けていく女子生徒にハルはそう思っていた。
肩を抱かれたままたどり着いたのは生活指導室と言う名のガラクタ置き場。
部屋の中はガラクタに囲まれ、その中央の少し開いた空間に机が1つとその机を挟むように椅子が2つ置いてある。
片方の椅子をひいて巳能生はハルに座るように言ったが、ハルは首を横に振って座るのを拒んだ。
「座りなさい」
「座らなくても話はできる。長話をするつもりは私にはない」
「いいから、座りなさい」
巳能生の声が低く響き、ハルの肩にある巳能生の指がグッと食い込んでミシリとした痛さにハルは顔をゆがめる。
ドクンとハルの心臓が大きく鼓動した。
にっこり微笑む巳能生の表情とはまったく違う雰囲気を読み取りながらハルは勧められた椅子に腰をかける。
机をはさんだ向こう側の椅子に巳能生は腰掛けて背もたれに凭れ掛かって腕組をして微笑んだ。
「勉強をしろと強制するのは好きじゃないが、白紙と言うのも、ね?」
「私には勉強など必要ない。このような学習がなんの役に立つ?」
「学生って言うのは勉強するのが当然だし、それが仕事でもある」
「フン、紙切れひとつで何がわかるっていうんだ」
「いやいや、意外に勉強って言うのは面白いものだよ。ハル…いや、メギドの管理者と言ったほうが良いかな?」
鼻で笑っていたハルは巳能生の発したその言葉にピクリと方眉を上げ呟く。
「なんだ。やっぱり貴様……」
「本当はもう少し観察していようと思ったんですけどね。リラがしゃべってしまいましたから」
息を1つはいて、ちらりとハルに流されたその視線の先にある巳能生の瞳はゆらりと黒く燃えていた。


 
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