Evil.Umpire

<Sweet Orange Story

  Life めぐり会う言霊>

MINOU 5

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じっとりと厭らしく絡み付いてくる巳能生の視線は、この世界に生まれてきてはじめてハルの背筋に悪寒を走らせる。
黙示録を意図も簡単に素手で退け、滅することはできないという巳能生。
(一体、やつは何者?)
その疑問だけがハルの頭の中を駆け巡っていたが、その答えは出ない。
ハルのその様子を楽しげに見つめて、薄い笑いを唇の端に浮かべていた巳能生は一歩ずつハルに近づいていき、ハルはじりじりと後ずさった。
ハルの背中に窓ガラスが当たった瞬間、巳能生の右手がハルの顎に当てられる。
「はい、行き止まり」
押さえつけるように添えられた右手とは違い、左手はハルの体を柔らかに触り、肩から腕を味わうように数回撫で回したその手はそのままスルリとハルの腰へと回され、巳能生の微笑みにハルは下から睨み付けた。
「貴様、何がしたい?」
「何者だという質問の答えを聞かずに、次の質問かい?」
「答える気があるのか?なら答えてもらおう」
「ククク、そうだね。どうしようかな?自分で考えないとお勉強にならないんじゃない?」
「勉強だと?!そのような次元の話はしていない!」
「ふふ、そう?」
小さく笑い睨み付けるハルの鼻先に自分の鼻先を持ってきた巳能生は、その吐息をハルの唇に吹きかけて、唇を重ねようとさらに近づいたが、ハルは巳能生の薄く桃色をした唇にプッと唾を吐く。
眉間に皺を寄せてハルに近づくのをやめた巳能生は、ハルの顎をつかんでいないほうの手で、唇についたハルの唾をぬぐってその手をじっと見つめた。
少し自分から離れた巳能生にハルはフンと鼻で息を吹きかける。
「己の分を知れ。お前ごときに私の接吻をやるほど私は馬鹿ではない」
「……見損なってもらっては困る。唾がついた程度で僕がやめるとでも?」
「ならば、次はその唇を噛みちぎってやろう」
手についたハルの唾を舌でなめとりながら言う巳能生にハルは口の端をあげてそういい、巳能生は顎においていた手を放した。
「貴女ならやりかねませんね。さすがの僕でも血まみれのキスは好きじゃない。何より、この容姿は気にいってるんです。失うのは嫌ですからね」
(容姿を気に入っているだと?)
巳能生の言葉にハルはピクリと眉を動かし、視線を床に向け考え込んだが、横から現れた巳能生の手に気づき、その手を振り払う。
「二度までつかまると思うか?」
「ククク、いや、それは無いかも知れないね。それに、そろそろ潮時だ」
「なに?」
「小煩い君の下僕がやってきたようだから、僕はさっさと退散させてもらうよ」
「退散だと?答えを聞かないまま帰すとおもっているのか?」
巳能生の腕をつかもうとしたハルからふわりと浮き上がって後退した巳能生は教室のドアを開いてにっこり微笑んだ。
「今日のところは帰らせてもらうことにするよ」
「貴様……」
「大丈夫、君が退屈しないようにちゃんと君達の相手はいるからね」
クスクスと笑って教室のドアを出て行く巳能生を急いでハルは追いかけ、巳能生が閉じたドアを開いた。




 
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