Evil.Umpire

<Sweet Orange Story

  Life めぐり会う言霊>

MOKUSHIROKU 2

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ダースとサイが悩んでいる間、ハルはずっと黙示録を両手に抱いたままベッドの中にいた。
頭まで布団をかぶってベッドの中でつぶやき続ける。
「何故、何故答えてくれない、黙示録……」
ブルッと体を震わせて、寒さをこらえるように背中を丸め、ハルは見開いたままその瞳の中心を細かに揺らしていた。

学園から帰ってきてすぐ、ダースやサイの言葉を背中に、自分の部屋に入ったハルはガクリと膝を折る。
ハルの脳裏にとても鮮明に巳能生の瞳が映し出され、その射るような視線がいまだ自分を見つめているようで、背筋に悪寒が走ったのだ。
こんなことは初めてだった。
(恐怖ではない。私は恐れを知っている、では、私のこの気持ちは何?)
自分の中に生まれた感情に戸惑うハルは黙示録に尋ねるが、黙示録は沈黙したまま。
「どうして?」
黙示録の様子に首をかしげたハルの耳にダースの声がして、反射的にハルは自分の部屋に結界を張った。
誰にも会いたくないという気持ちが湧き上がり、1人で居たいとは思ってなかったのに一人になってしまったのだ。

それからずっと、ハルは黙示録を胸に抱いたまま布団の中にうずくまって、真っ暗な日々を送っていた。
その布団の中からはぶつぶつと呪文を唱えるかのようなハルの声が聞こえる。
「どうして、どうしてなんだ」
あの出来事以来、黙示録が沈黙し、オーラを発することも、ハルの声に反応することも無く、ハルは不安の中に居た。
「何があったんだ?声が聞こえない、黙示録の気配が感じられない……何故?」
黙示録とハルは一心同体。
ハルはハルであると同時に黙示録であり、黙示録はハルであった。
にもかかわらず、巳能生に黙示録が力を発揮することなく、その事実に逃げ出すようにその場を後にした後、黙示録の心は閉じてしまい、どんなにハルが鞘を抜こうとしても、その刀身が鞘から抜き放たれることは無い。
自分の心の動揺が黙示録に伝わっているのかと、とにかく心を落ち着けようと閉じこもってジッとして6日が過ぎた。
6日過ぎ、いまだ巳能生の居るような瞳は忘れられずに居たが、多少の落ち着きを見せたと思い、ハルは再び黙示録に集中するが黙示録が抜けることは無く、気配も感じない。
「分からない。何故こんなことに……」
肩を落としたハルの耳に久しぶりに聞くダースの声がドアの向こうから響く。
「ハル!お前いい加減にしろよ。サイの奴まで心配しすぎて篭っちまったんだぞ!サイに言えねぇことなら俺が聞いてやるからサッサとこの結界解きやがれ!」
イライラと怒鳴るダースの声にビクリと体を揺らしたハルだったが、一人きりで悩んでいたせいか、ドアの外から聞こえるダースの声が少し嬉しかった。
結界をといて、様子を伺いながらゆっくりドアを開いたが、すぐにドアはダースの手によって開け放たれる。
「やっと結界を解いたか。ほれ、さっさとサイの部屋に行くぞ」
二カッと笑って手をとるダースにハルは思わず抱きついて涙を流していた。



 
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