Evil.Umpire

<Sweet Orange Story

  Life めぐり会う言霊>

MOKUSHIROKU 3

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驚いたのはダース。
閉じこもっていたハルがやっと出てきたと思えば、自分にしがみついてワーワー声を出してないている。
「お、おい、どうした?」
張り付くハルをはがそうとしてみたが、木にしがみつく蝉のようにダースにしがみついて離れないハル。
ハァとため息をついて仕方なくハルの部屋の中に入ってベッドに腰掛け、ポンポンとハルの頭を軽くたたいた。
「悪いが、俺は慰めというのは苦手だ。だが、生意気なお前が無くって事はそれなりのことがあったんだろうと思う」
「……」
「あ〜だからだな……だぁ!面倒臭ぇ!何があったか説明しやがれ。でないとなんとも言えねぇだろ」
「そんなに怒鳴らなくっても」
「良いから話せ。どうして泣いた?」
不器用に微笑を浮かべるダースに、ハルは胸の辺りがほんわりと暖かくなっていくのを感じながら話し始める。
巳能生に黙示録が効かなかったこと、自分の中に変な感情がずっと存在していること、そして、黙示録の沈黙。
時に巳能生の視線を思い出して小さく震えるハルの肩を抱いてダースは黙ってハルの話を聞いた。
ハルが全てを話し終わり、少し心が軽くなると、今度はダースの表情がこわばる。
「……で、その後、黙示録はずっと沈黙しているんだな」
「ん、全然感じられない」
「原因は俺らよりも上に聞くのが一番だろうな。それより、黙示録を掴む事の出来る巳能生って奴は一体何者だ?」
「たぶん、あれは【人】だ」
眉間に皺を寄せて考え込んでいたダースの横でハルがポツリと呟いた。
「人?人って人間ってことか?」
「あぁ、そう、人間」
「ま、待てよ。人間が結界を張ったり、虜にしたりするなんて聞いたことねぇぞ。そりゃ特定の特別な力を持った奴なら出来なくは無いが、あれほどまで虜にするのは無理だ」
「でも、人間なんだ。黙示録に触れる聖魔など居ない。それはどんな聖魔であっても破られることのない理(ことわり)。だが、人は違う。聖魔とほとんど変わらないにも関わらず、聖魔として分けられることなく存在している。それは黙示録で狩る対象にはならない」
「だから、黙示録にも触れるってか?んな事……」
『そんな理由で人間だといえるのか?』そう言おうとしたダースだったが、ハルの暗くそして真剣な瞳に言葉を飲み込んだ。
(本当にそうなのか?しかし、俺だってこの世界に生まれて数百年経つが、人がそんな力を持つなんて聞いたことが無いぞ)
ちらりとダースがハルを見れば、ハルは黙示録を抱えて小さく震えている。
「なんにしても俺の知らないことばかりだ。サイにも聞いてみよう。ほら、立て」
「立たなくて結構ですよ。ちゃんとここに居ますから」
「なんだ、来たのか?」
「結界が消えたのでね、ダースといちゃついてるとは思いませんでしたが」
「どこに目ん玉つけてんだ?これのどこがいちゃついて見える」
自分よりも先にハルがダースに相談してたことに少々ムカついた態度を見せて悪態ついたサイだったが、ハルの姿を見るとツカツカと駆け寄って目の前に座り「よかった」とハルの頭をなでた。


 
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