Evil.Umpire

<Sweet Orange Story

  Life めぐり会う言霊>

MOKUSHIROKU 5

イメージ


別の部屋へ移り、フゥとダースが首をまわし、リラックスするように深呼吸をし、それを聞いてあきれたように魔王が声をかける。
「ダース、お前もいい加減なれたらどうだ?」
「ふざけんな。あれでも慣れてるほうだろうが。オーラであれだけ圧力をうけて精神に異常を来たさず、話までしてやってるんだからよ。しかも、親父だけでなく、神様もお出ましとあっちゃ、そこらの雑魚ならとっくに消滅してるレベルだぜ?」
「フフフ、そうですね。ダース殿の言う事も正しい。あの謁見の間は我らが訪ねてきた者を試す場でもある。そのため、我ら自身でもオーラが抑えられないように術がかかっていますから」
「それはそうだが、あの程度で体の筋肉が凝るようじゃまだまだだ」
「まったく、自分のお子様でしょう?手厳しいですね」
「我の子は腐るほど居るからな。我が子だからという特別なものはない。お前だってそうだろう?下手したら我より子が多いのではないか?」
ニヤニヤとして親父的会話に花を咲かせようとする2人の横でコホンと咳払いをひとつしたサイが微笑みながら口を出した。
「会話をお楽しみのところ申し訳ございませんが、ハル様の件を……」
「あぁ、そういえばそうだったな。詳しい話を聞こう」
先ほどとは打って変わってまじめな顔になった神と魔王に促され、ハルはポツリポツリと出来事を話す。
ダースとサイもハルを補足するように自分の分かる範囲の出来事を話し、全てを聞き終わった神と魔王は互いに顔を見合わせ、眉間に皺を寄せた。
「あの、どうかなされましたか?」
2人の様子にサイが少し心配げに聞き、しばしの沈黙の後、魔王が口を開く。
「黙示録はその存在自体が特別でな。黙示録はその管理人にしか扱えない。だが、創世の書と同じく、扱うべき人物を選ぶんだ」
「ちょ、ちょっと待て。ハルにしか使えないのに相手を選ぶって言うのか?」
「魔王、それでは何がなにやら分からないでしょう?面倒くさがらず、もう少し詳しく言ってあげないと」
「チッ、親父、相変わらずだな」
ジットリとしたダースの視線を受けながら、魔王は「まぁな」といわん笑顔を見せたが、厳しい神の視線にため息をついた。
「黙示録は扱うもののその感情を読み取るんだ。創世の書はその者の力量すべてを量るが、黙示録は自分を使うに値する精神を持っているかどうかを量る。何故なら、黙示録を扱う者は管理者であるという前提があり、その力の強さは量るまでもないからだ。ただ、黙示録によって起こされる管理者と、我ら神と魔王によって起こされる管理者では精神構造がまるで違う。神と魔王によって起こされる管理者、つまりはハル様の事だが、予期せず起こされる事はその精神の未熟さを表す」
「……では、今回の事はもしかしてハルの精神の問題と?」
魔王の説明にサイがチラリと横にいるハルに視線を流しながら言えば、ハルの体がビクリと揺れ動く。
理由はなんとなく気づき始めていたハルだったが、改めて他人から指摘されると心臓が跳ね上がってしまい、ドクドクと鼓動し始めた。
「ハルの精神って、その巳能生とか言う男のせいでハルがどうかなってるっていうことか?」
「そういうことですね。ハル様自身がよく分かってらっしゃるはずです。そうでしょう?ハル様」
神の涼やかな声がハルの耳の届き、ハルはうつむいていた顔をゆっくりと上げ、神の目を見つめ返した。


 
イメージ上へ
イメージ イメージ イメージ

web拍手 "

応援ヨロシクです♪イメージ
inserted by FC2 system