Evil.Umpire

<Sweet Orange Story

  Life めぐり会う言霊>

MOKUSHIROKU 6

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揺れるハルの瞳。
その瞳に神は悲しげな表情で瞼を閉じた。
「認めたくないのですね」
神の言葉にサイがクッと唇を噛み締めているハルの代わりとばかりに聞く。
「認めたくないとは?どういうことです?」
「巳能生という、生まれて初めて会う黙示録の通用しない存在に対する恐れや不安がハルにのしかかっています。しかし、ハル自身はそれを認めたくない為になおさらどうすれば良いのか分からなくなってしまっているのです」
「……がう」
小さく呟いたハルの声にサイはハルの方を見て首をかしげ、肩を抱くようにおいた手のひらから小刻みに伝わってくる震えに気づいた。
「ハル?」
「ちがう、違うぞ!」
大きく叫んだハルにダースが驚いて視線を向ければ、サイの手をはじいて立ち上がったハルはキッと神を睨み付ける。
ただ、その視線に力は無く、噛み締めた唇も揺れ動いていた。
「ハ、ハル、どうしたんだ?急に怒鳴ったりして」
「私は恐れてなど居ない!恐れではない!!」
「お、おい、何をむきに……」
ダースが驚きの表情で言えば、ハルはハッとして泣きそうな顔でその部屋を飛び出し、ハルの後をダースを睨み付けたサイが急いで追いかける。
その場に残されたダースは魔王に視線を向けて肩をすくめた。
「どうなってんの?」
ダースの質問に魔王は只、大きなため息をついてうなだれ、神が横から悲しげな声をだす。
「ダース、貴方にハルはどう見えますか?」
「ど、どうって、生意気なガキかな?」
「我が息子ながら管理者をガキ呼ばわりとはな」
「そうではなく。全く魔の属性の者は……ハルの力や精神の事を聞いているのです」
「力、か。そうだな〜黙示録のせいもあるが、俺を捕らえた時のあの強さは半端無かったな」
「そう、ハルは黙示録を扱うものとしてそれ相応の力を持って生まれています。それこそ生まれながらにして我ら以上の力を持って」
「ま、当然だろう。でなきゃあんな馬鹿でかい力を持った黙示録が扱えるわけが無いからな。それが?」
「問題なのはそれに相応する精神を持って居ないという事なのです」
「精神?」
「今のハルは人間で言えばまだ7歳程度の子供の精神しか持ち合わせていません」
「つまり、不慮の事態が起こった時、それに順応できる精神ではないという事だ」
うなだれた魔王がそう言い、ダースはなんとなく2人の言いたい事が分かってきたような気がしていた。
片手を唇の近く、顎をつかむようにして考え込んだダースの耳にさらに魔王の言葉が届く。
「このような事態にならなければハルの力は強く、恐れなどを抱くことなく、聖魔を狩りとっていただろう。我らもこのような事態を予想してなかったからな。多少の精神の未熟さなど関係ないと思っていた」
「関係ない?アンタ達らしくない考えだな。肉体と力、そして精神は強く結びついてるんじゃなかったのか?」
「ダース、お前がどう思おうと、ハルは混乱を鎮圧するだけの存在。聖魔の均衡が保たれればその身を沈めてもらう。短き命のものに我らの精神論は無用だ」
ダースは口答えすらしなかったが、魔王のその言い分に心の中でチッと舌打ちし(だからお前は嫌いなんだよ)と文句を並べていた。


 
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