Evil.Umpire

<Sweet Orange Story

  Life めぐり会う言霊>

MOKUSHIROKU 7

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ハルの後を追ったサイはその姿を見失い、おろおろとその場で周りを見渡す。
ハルがこの世界に呼び起こされてすぐ、神の命令でハルの傍で何かと世話をやいて来たサイにとって、ハルは娘に近い存在でもあった。
見渡しても、気配を探っても全く見つからないハルにため息をついてその場にサイは座り込んだ。
「過保護だな、お前って」
ククッと口の端をあげてからかう様にサイの背中にダースが声をかける。
「煩い。貴方に私の気持ちなど分かりませんよ」
「そうだな、俺にサイの気持ちはわからねぇ。だが、それと同じようにお前だってハルの気持ちは分からないだろ?」
「……何が言いたいんです?」
「放っとけって事だよ。一人になりたい時もある、一人がイヤなら自分からやってくるさ」
「そんな悠長な!ハルに何かあったらどうするんです!」
「この場所は頂点の存在である神と魔王の空間だぞ?ハルが出て行けば神や魔王が気づく。それに、ハルが必要なら俺たちのところにくるだろ。俺たちの存在はハル次第の存在なんだから」
「それは……そうですが」
「周りが熱くなってどうする?お前も暫く頭を冷やせ。過保護ってのは時と場合だ」
ニヤついた口から出てくるダースの言葉は的を得ているような気がして、サイはムッと口を尖らせたが、ハル自身が気配を表さない限りはどうにも出来ないことはわかっていたので返事をすることなく、ダースに背中をむけその場をあとにした。
血の契約とは血を分け与えたものに対しての絶対服従を指し、その行動範囲も管理され、それと同時に管理者の行為に干渉する事は出来なくなる。
ハルがサイやダースに見つかりたくないと姿や気配を消せば、サイ達からハルに接触する事は出来なくなるのだ。
肩を落とし、ため息ばかりが聞こえてくるサイの後姿を見送りながら、ダースもまた、ため息を吐く。
「ったく、分かってる事なのに心配性め。付き従うだけが俺たちじゃないだろうが……コレだからな〜聖の属性は疲れる」
呟くダースは近くの壁に凭れ掛かって、ふっと天井を見つめた。
ハルは鎮圧だけの存在で短い命だと魔王が言い放ったあの後、魔王は冷たい視線をダースに浴びせ言い放った。
「お前の契約も仮初め。ハルの命が尽きてもお前の命は消えぬ。ただ黙って付き従っていれば良い」
「……フン、相変わらず勝手な言い分だな」
「勝手だと?」
ダースの言葉にざわりと空気がゆれ、魔王のオーラが強くなったのを神が察知してすっと神もまた、オーラを強め、その空気を中和する。
「ダース、父上に少々言葉が過ぎませんか?」
「父、か……。そう思っていたのははるか遠い幼少の可愛い盛りまでですよ、神様」
にっこりと神に微笑むダースに鋭い瞳を魔王が向けた。
「お前は昔からそうやって何もかも我が悪いかのように言い反発する」
「他の連中と違って、自分の考えとは違うものにホイホイと頷く事はできない、素直な性格なんだよ」
「フゥ、お前に何を言っても無駄だろうが、我には個人としての意見より全てのものの上に立つものの立場が優先される。それが幾ら自らの考えと全く違うものであろうともだ」
「ククク、ご立派な事だ。俺には到底出来ない仕事だね。せいぜい頑張りな」
「ダース!魔王にそのような言い方……」
フンと背中を向けて、サイが出て行ったほうへと歩き出すダースに神が怒鳴ったが、魔王が神を静止し、首を横に振る。
「言った所で無駄だ、かまうな」
「しかし……」
顔をしかめて心配げに見つめる神に魔王は「本当に良いのだ」と何故かやさしく微笑み、神にうなづいた。


 
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