Evil.Umpire

<Sweet Orange Story

  Life めぐり会う言霊>

SHIKOU 1

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大きな廊下のドーム状の天井の片隅で身を小さく、気配を無くしたハルがジッと体育すわりをしている。
黙示録をその手にかかえ、自分の膝をジッと見つめて考えるのは自分の存在について。
今まで疑問にすら思わず、ただ、聖魔を狩っていた。しかし、誰よりも強く、誰の力の影響も受けないと思っていた黙示録が巳能生には効かず、挙句の果てに自分に沈黙してしまったのだ。
「……どうして、お前は答えない?私とお前は一心同体のはずなのに……お前の心が分らない」
ポツリと呟いたハルの視界がゆがみ、ポトリと涙が下へ雫となって落ちていく。
「相手に質問ばかりして答えを求めず、自分で考えてみたらどうだ?」
不意に声がかけられ、ハルはバッと顔を上げて声のした自分の右の方を見た。
ソコには、真っ黒なコウモリのような翼をはためかせ、その場にフワリと浮いているダースが居て、ハルはグイッと自分の腕で流れ出る涙を拭って微笑を向けてくるダースを睨み付ける。
「なんでお前がココにいるんだよ」
「あのな〜俺は魔王の息子だぞ?この城と会話できないとでも思ってんのか?ま、この下にある水溜りを見つければ誰だってこの上に何かあるって思うだろうけどな」
「お前、魔王の息子なのか?」
「えっと…。まさか気づいてなかったとか?」
「気づくわけがないだろ。そうか、ダースは魔王の息子か」
「全く、自分が強いヤツは周りを見るって事を知らないな」
ダースはそういってフッと笑い、ハルの目の前に降り立ってうずくまるハルの脇に手を居れ持ち上げると、ハルを横瀧にしてそのまま更にドーム状の天井の方へ舞い上がった。
「な、何をする!」
「まぁまぁ、面白いところに行くんだからちょっと黙ってろ。ん〜と、この辺かな?」
ジタバタと足を暴れさせるハルにウィンクをして答えたダースは天井を探り、ある場所を見つけるとスイッと天井をすり抜けその中へと入っていく。
「うん、変わってないな〜」
呟いたダースは少し狭いその場所で小さなクッションが置かれている所にハルを抱えたまま腰を下ろし、ニッと笑ってハルを見た。
2人も入れば少し身動きが取れる程度の狭い場所の上空には宇宙が広がっていて、ハルは口を開いてその美しい銀河に目を奪われて、ずっと抱えていた黙示録を手放しダースの体にカタリと黙示録が当たる。
「すごいな……なんだ?これ?」
「俺の秘密の場所。親父に怒られたりしたらよくココに来たんだ。この神殿がある場所は異空間で、空間のちょっとした隙間から世界の宇宙が垣間見える場所があるんだ。ココはその1つ。この空間を形作ったかつての神か魔王の遊びでちょっと作ってみた部屋だと思うけど、ココを知ってるヤツって殆ど居ないんだ。昔は広く感じたんだけどな〜意外に狭いのな。俺が小さかったからそう感じたのかもな」
「……どうしてココに連れてきた?」
「さぁ?どうしてだと思う?」
「私が聞いているんだぞ」
「ククク、ハルは質問ばかりだな。少しは自分で考えてみろ」
「……考えたくない。考えて答えを出してどうなる?私はただ、聖魔を狩るだけの存在で、聖魔の均衡を保つために存在している。その存在に疑問を持ってはいけないんだ」
ムッと口を尖らせて泣きそうな顔になるハルのその頬にダースはそっとその唇を寄せた。



 
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