空と太陽と向日葵と…

<Sweet Orange Story

  Life めぐり会う言霊>

向日葵と太陽 10

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太陽に言われたからと言うわけでは無いが、向日葵は部屋を出て、食卓へと階段を降りていった。
先に食卓について、食前酒と言いながらビールを飲んでいる父親に「おかえりなさい」と挨拶をし「ただいま」という父親の声を聞きながら決まっている食卓の自分の席に着いた。
既に並べられていた夕食に、母親がご飯を入れた茶碗をもってきて席に着き、母親と向日葵だけが手を合わせて家族皆で「いただきます」と言う。
テレビの野球中継に夢中になりながら食事をする父親に、夢中でお隣さんの事を話す母親。
母親の話にいつも通り生返事な相槌をうって父親はビールを飲む。
いつもの光景にいつものやり取り。
(夫婦ってこんなもんなのかな〜)
と向日葵はいつもそう思って眺めながら、食事を取っていた。
向日葵はどちらかといえば、食べたら食べた分だけ太っていく体で、クラスメイトの「食べても太らない」と言う子が羨ましいといつも思っている感じだった。
だから、母親が「成長期なんだから食べなさい!」っていっても、ハイハイと返事はするけど、極力食べないように心がけていた。
始めは大目の夕食を作っていた母親だったが向日葵が食べる事無く、おかずが余っていくと言う現象に、今では食べなさいといいながらも捨ててしまうのは勿体無いと向日葵のおかずは減らしてた。
両親よりも半分以上少ない夕食。
それでも、今日は、それすらも向日葵の喉を通っていかなかった。
お腹はすいていた。
お昼ごはんだって手のひらに乗るほどの小さなお弁当箱に詰まったご飯と数個のおかずだけ。
なのに、食事をしていくのがとても辛い。
本当は殆ど残して部屋に行こうと思ったが、ただでさえ少量の食事なのに残したりしたら母親に何を言われるか分からないと何とか口に詰め込んで、無理やり飲み込み、話に夢中の母親に「ごちそうさま」と言って、食器を流し台に運んでから自分の部屋へと帰った。
自分の部屋のドアを開けると、何気に視線は窓の方へと向く。
カーテンの閉まった、窓ガラスの開いている窓の向こうは明るく、太陽が部屋に居て電気をつけているんだと分った。
それを確認した向日葵は自分の部屋の電気をつけようとスイッチに伸ばしていた手を引っ込める。
フーと何だか息苦しい自分の胸に空気を入れるように深呼吸をした向日葵は電気をつけずにドアを閉め、音を立てないようにベッドに横になった。


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