空と太陽と向日葵と…

<Sweet Orange Story

  Life めぐり会う言霊>

流れた時間 1

イメージ



真っ暗な部屋の中、天井を見上げ、天井に向かって手を大きく差し出す。
薄く自分の手が見えるのは太陽の部屋の電気のせい。
ジッと差し出した手を見つめていた向日葵だったが、ギュッと手を握り締めるとそのまま腕を曲げ、目を腕で覆うように頭を抱えた。
(……なんだか色々、疲れちゃった…)
目を閉じて、更に腕で覆われてしまっているので真っ暗。
静かな自分の部屋に太陽の部屋の音が響いてくる。
太陽も部屋の窓を開け放しているのだろうと自然と向日葵の耳はその音に傾いて集中していった。
ガタンガタンとまるで暴れているような音はきっと引越しの荷物整理だろうと向日葵が思っていると「あ、クソ!」と途中で太陽が呟く声が聞こえる。
太陽の変わらない態度や声を聞くと、向日葵はクスリと小さく口元に笑顔をたたえた。
(本当に、色んな意味で変わんないね。どうせ、掃除も下手くそなんだろうな〜)
いつ見ても汚い太陽の部屋を覗いて、太陽にダメでしょ!と怒っていた自分を思い出す向日葵の耳に、黒電話の「ジリリリン」という音が聞こえ、耳をピクリと動かす。
(これってマジで黒電話の音だよね?……まさか、太陽兄ちゃんのケータイの着メロって黒電話?)
ケータイに入っている音の中に黒電話があるのは知っていたが、それを設定している人など向日葵の周りには居なかったので、少し驚き、そして、プッと噴出しそうになった。
(らしいといえばらしいけど。フフッ)
口の端をニッと上げてクスクス笑っている向日葵の耳には電話を探すバタバタとした音が聞こえてから太陽の声が聞こえる。
「も、もしもし?……あぁ、なんだ瞳か」
太陽の電話に対応するその声に、向日葵の心はドキンと不安の鼓動を響かせた。


イメージ上へ
イメージ イメージ イメージ

web拍手 "

応援ヨロシクです♪イメージ
inserted by FC2 system