空と太陽と向日葵と…

<Sweet Orange Story

  Life めぐり会う言霊>

流れた時間 3

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「だから、わかってるって……しつこいな〜」
電話の太陽の声が少々イライラしたものに変わって来た時、向日葵は背中でその声を聞き、まだ枯れない涙で頬をぬらしながらボンヤリと天井を眺める。
(こんなに泣いたの久しぶり……)
彼氏と言う存在に浮気をされた時だって、親にしかられた時だって向日葵は泣く事はなかった。
昔は感情のままに笑い、感情のままに泣き出していた向日葵だったが、あの日、自分がどんなに待っても自分がどんなに望んでもそれはかなえられない事だと分った日、向日葵の心にはポッカリと穴が開き、どこか冷めて、からからに乾いていた心が自分自身を潤わす、泣くという行為を止めてしまっていた。
自分の名前がどんな事をしても報われないのだと物語っているようで、報われないと分っているのに涙を流す行為が馬鹿馬鹿しく思えてしまっていたからだ。
向日葵は涙で歪んだ天井をジッと見つめて何時この涙は止まるのだろうと思い、また、自分の意識が涙と一緒にどこか遠くに行くような錯覚を覚えていた。
「……あぁ、そのうち行くよ……無茶言うなよ、俺にだって都合ってのがあるんだぞ……じゃぁな、切るぞ!」
半分呆れたようにそして、最後には怒鳴るような太陽の声が響き、大きな溜息が太陽の部屋から聞こえる。
向日葵は動く事無くその様子を背中で感じていた。
溜息のあと、静かな空気が辺りを包んでいたが、スグにガサガサと太陽が片づけを再開する音がする。
(……太陽兄ちゃん)
太陽の存在があるという確実な音を背中に感じ、心の中で太陽を呼べば、向日葵はその切なさに胸が苦しくなっていく。
今までの彼氏になら平気で聞けた「瞳って誰なの?」そんな一言すら言えず、太陽に見つからないように部屋の電気を消して床に小さくうずくまっている向日葵は大声を上げて泣き出したい気持ちを必死で押さえ込んでいた。
「よっし、ま、こんなもんだろう」
太陽の声が聞こえ立ち上がるような音がした後。
カタン
太陽が窓に手をかける音がすぐ近くで聞こえて、ビクンと向日葵は体を揺らした。

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