空と太陽と向日葵と…

<Sweet Orange Story

  Life めぐり会う言霊>

流れた時間 4

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今、太陽が向日葵の部屋に来れば向日葵は涙にぐちゃぐちゃになった顔で太陽に会わなくてはいけない。
もちろん理由も聞かれてしまうだろう。聞かれたら何て応えればいいのかも分らない向日葵にとって、今ココで太陽がこちらに来る事、それだけはどうしても避けたかった。
「なんだ、まだ部屋に帰ってきてないのか?向日葵ぃ〜!いるか?」
窓の向こうで太陽が自分の名前を呼んでいる。
カタンと太陽が動くときしむ窓枠の音にビクビクしながら向日葵は黙って体を小さくしたまま「来ないで!」と祈った。
暫く、様子をうかがうような沈黙が続き、
「……フ〜居ないみたいだな……仕方ない、お風呂に入ってくるか……」
諦めた太陽の声と共に、カラカラと網戸の閉まる音がして足音が遠ざかり、パタンとドアが閉まってはじめて向日葵はフーと息を吐いた。
そのとき、初めて自分が息を止め続けていた事に気付き、ハァハァと荒く息を繰り替えす。
緊張から解き放たれた心臓は未だドクドクとその鼓動を早めたままで、握り締めていた手は離れる事無く震えている。
向日葵はうずくまった状態で必死に頭に言い聞かせていた。
(気にしちゃいけない……太陽兄ちゃんが帰ってきただけで舞い上がってしまったけど、関係は変わらない……そう、私は妹なんだ)
まるで呪文でも唱えるように「自分は妹、妹なんだ」とブツブツ言って居た向日葵だったが、その事実と、認めさせようとするその行為、そして、その内容を思えば思うほどにドキドキと緊張で高鳴っていた心臓は静まり返り、深く重たい気持ちが向日葵の胸を締め付ける。
太陽に会った時に心にあった期待はそう思った自身への憐れみへと代わり、とめどなく涙をこぼさせた。
(ダメよ……泣いてどうにかなるものでもないでしょ?泣いちゃダメ!ダメなのよ!!)
まるで、今まで泣かなくて溜め込まれていた涙が全部、体の外に出て行くように止まることを知らない状態で、向日葵は膝を抱え込んだ。
頬を伝ってボタボタと涙は向日葵の太腿を濡らしていく。
(……でも、泣きたいの……大声を上げて泣き叫びたいの……)
なんともいえぬ思いが渦巻く向日葵の心は自身でどうする事もできなくて、ただ、そこで時間を流していた。

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