空と太陽と向日葵と…

待ち合わせよりも随分早い時間なのに、遼の姿を見つけて、向日葵は思わず近くの店に入って隠れる。

（どうして？あれ？私待ち合わせ時間、間違えてた？？）

向日葵は慌ててケータイを取り出すと、メールを確認した。

確かにメールには１１時となっている。でも、今は１０時。１時間も早く遼は来たことになる。

（なんだか、気が重いな……）

向日葵は、胸が締め付けられるような苦しさを覚えて、フッと溜息を付いた。

このまま隠れているわけにも行かないので、待ち合わせ場所に向かって歩いて行く途中、向日葵は思いもかけないものを見る。

（た、太陽兄ちゃん？！）

向日葵の居る場所から、道を挟んで向こうに太陽が見え、思わず、向日葵の足は太陽を追っていた。

太陽は駅の向こうへと歩いていく。

（ドコに行くんだろう？）

太陽に気づかれないように距離をとって太陽の後ろをついていく。

すると、太陽がコンビニの前で立ち止まり、腕時計を見た。

（……待ち合わせ？誰と？）

コンビニの壁に隠れるようにして、太陽の近くまで来た向日葵は、じっとその場に息を潜め、太陽の様子をうかがう。

暫くして、向日葵が居る方とは反対方向から１人のとてもきれいな女の人が現れ、太陽に向かって走ってきた。

（綺麗な人……まさか、あの人と待ち合わせ？）

向日葵が壁から少し頭を覗かせて様子を見ていると、その女の人は太陽に向かって抱きついて、驚く太陽の唇にキスをする。

「また会えて嬉しい」

「瞳？！」

（瞳？……あの人が瞳……）

瞳はニッコリ微笑んで、再び驚いている太陽の唇を奪い、ギュッと頭を抱え込んだ。

その姿を見ていた向日葵の景色はボンヤリと歪み始める。

知らず知らずの内に、止まらない涙が零れ落ちて、向日葵は後ずさるようにしてその場を離れた。