空と太陽と向日葵と…

<Sweet Orange Story

  Life めぐり会う言霊>

私と言う自分 6

イメージ


暫く沈黙が続き、向日葵は溜息をつきたくてもつけない、何かを言い出したくても何を言えば良いのか分からない状況に体がドンドン固く
なっていくのを感じる。
(どうしよう……)
向日葵がチラリと太陽を横目で見ると、思いがけず太陽の視線とぶつかって、ずっと太陽が向日葵を見ていたことに気がつき、すぐに視線
を反らせた。
「おかえり……って言ってなかったね」
優しく太陽の声が向日葵の頭の上から響いてきて、向日葵は視線を歩いていく先の道路に向けてコクリと頷く。
「た、ただいま」
「何時帰ってきたんだ?」
「さっき、ついさっき帰ってきたんだ」
「ククッ、それで家に何も無くって買い物を頼まれたってところか」
「うん、帰りにスーパーに寄れば良かったのに帰ってから言うんだもん」
「おばさんらしいな」
クスクスという太陽の笑い声に向日葵は少し気持ちが楽になって、体の固さが和らいだ。
それでも太陽の顔を見ることは出来なくって、向日葵はいつもの会話をするように気をつけるのが精一杯。
必死で会話をしていると、ピタリと太陽の歩みが止まった。
「おい!向日葵。何処まで行く気なんだ?」
太陽にそういわれて向日葵はハッとして、周りを見てみれば既にそこは自分の家の玄関。
「あ!」
「ハハッ、相変わらずまぬけだな〜」
「ま、まぬけじゃないもん!」
笑って言う太陽に、プクッと頬を膨らませて返事をした向日葵は玄関へと歩き、扉を開いて中に声をかけた。
パタパタと小走りで玄関に走ってくる足音がして、母親が顔を出し、太陽は荷物を母親に預ける。
「あらあら、ごめんなさいね〜」
「いえ、ちょうど道でばったり会って、俺も帰るところでしたから」
太陽と母親は軽い挨拶をして、太陽は向日葵に小さく手を振って言葉をかける事無く自分の家へと帰って行った。
少し寂しい気持ちになった向日葵だったが、母親が騒がしく荷物を運べだの、料理を手伝えだの色々用事を言ってくるので感傷に浸っている時間はなかった。
ホッと一息つけたのは夕食の片づけが終わって、お風呂に入った後。
居間でくつろぐ両親におやすみなさいと言って自分の部屋に戻ってからだった。
部屋に戻り、後ろ手にドアを閉めて、電気をつけるより先に向日葵は窓へと歩く。
雨戸が未だシッカリ閉められたままの窓。
向日葵は何度か深呼吸を窓の前でして、そっと、鍵を開けてゆっくりと雨戸を開いた。

イメージ上へ
イメージ イメージ イメージ

web拍手 "

応援ヨロシクです♪イメージ
inserted by FC2 system