空と太陽と向日葵と…

<Sweet Orange Story

  Life めぐり会う言霊>

太陽の気持ち 3

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太陽の香りが鼻に届き、自分の唇が温かくなって向日葵は閉じたはずの目を見開く。
目に映るのは男の人にしては長い太陽の睫毛。
「んっ!」
思わず腰が引け、体をそらせようとした向日葵だったが包み込んだ手がしっかりと自分の顔を固定していて、顔をそむける事もできなかった。
(な?……何?)
突然の事にただビックリする向日葵。
耳には自分の心臓の音しか聞こえてこず、ドクンドクン、激しく暴れる心臓は複雑な思いでいっぱいだった。
(キス?私、今、太陽兄ちゃんにキスされてるの?夢?ううん、違う…熱い)
あまりに色々な事が頭の中を駆け巡っていき、向日葵は貧血のようにクラクラと頭がしてくる気がして、さらに向日葵の感情は自分が太陽とキスしているという事実にぐちゃぐちゃにかき回される。
キスしているという事実、それは目の前にあって、自分の唇から感触が伝わって、この後一体どうなるのだろうという考えが頭をめぐった。
別にファーストキスというわけでもなかったし、そういう男性経験に免疫がないというわけでもないからこの後の展開は色々予想できた。
それ自体にうろたえているという事は無かったが、いつもと違ったのは相手が太陽だという事。
太陽の体温が伝わり、鼻息が頬にかかる。
目の前にある瞳を閉じられたその顔は確かに太陽で、それを認識すればするほど、向日葵は動揺していった。
(……どうしたら良いの私)
今までの、一人が寂しいからというだけの理由で付き合ってきた特別な感情など無かった男の子なら、少し好き勝手にさせて、頃合をみてから自分の唇を相手に押し付け、突き放す。そして、にっこり微笑めば終わり。混乱や動揺など微塵も無く、ただ、表面上の出来事を処理していた。
なのに、今、向日葵はまるで電柱のようにその場に立って太陽にされるがままになっている。
向日葵が今まで経験したことのない、慣れた唇の動きに、情熱的なキス。
明らかに自分を求めてくれているその熱いキスを受ければ受けるほど、混乱していく向日葵の頭の中。
喜びよりも驚きが先行し、そして、それはわけの分からない怖さへと変換されていった。
揺れ動く太陽の唇はとても熱く、我慢の限界だといわんばかりに激しく求めてきて、身動きの出来ない向日葵にとってはそれがとても怖いものに思えてきていた。
「(こ、こんなキス。初めて……太陽兄ちゃん、怖いよ)ん、んぅっ!!」
ぴったりと重ねられた唇の中で、向日葵が唸って、重ねただけだった手で太陽の手を力いっぱい握ると太陽はハッと我に返る。
目の前にあった向日葵の顔に駄目だと頭では静止したにも関わらず、体が勝手に向日葵を求めてしまっていた。
ゆっくりと唇を離せば、向日葵の口からはハァハァと荒い息が吐き出される。
少し向日葵から距離をとった太陽の目に映ったのは自分のした行為に怯え、瞳を細かく揺らしている向日葵。
(俺はなんてことを……)
向日葵の怯えは太陽に深い後悔をうみ、ぎゅっと向日葵をだきしめ「ごめん」と呟いた。
「……ごめんって?」
太陽の大きな胸の中にすっぽり収まって、太陽の思わず出てきた謝罪の言葉を聴いた向日葵も少し震えながら思わず呟く。
「向日葵?」
「ごめんって謝らなきゃいけないようなことを太陽兄ちゃんはしたの?」
さっきまでの混乱が嘘のように太陽の「ごめん」という言葉を聴いた瞬間、向日葵の頭は冷めていった。

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