空と太陽と向日葵と…

<Sweet Orange Story

  Life めぐり会う言霊>

通じた気持ち 3

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精一杯のおしゃれをして、外に飛び出した向日葵は冬の日差しから、春の暖かさと夏の暑さを秘めたような日差しに思わず目を閉じる。
明るく広がった青空を見上げていると、目の前に太陽の顔が現れた。
「あんまり上ばっかり見てると躓いてこけるぞ」
「平気!」
フフンと笑って見せた向日葵だったが、玄関を出て数歩、自分の家の玄関にあるわずかな段差に躓く。
反射的に顔からこけてはまずいと手を地面に向かって突き出したが、その手が地面につくことはなく、向日葵はふわりと宙に浮いた。
まるで自分の背中に急に羽根が生えたようで、こけたことよりもそちらにビックリしする。
向日葵の体は地面から離れ、そして、地面に背を向ける形でトスンと横になった。
「だから言わんこっちゃない。向日葵は昔っからボケッとしてこけてたからな」
上からニヤリと微笑を浮かべて言ってくる太陽に、横抱きにされたまま向日葵は頬を膨らませた。
「ムッ、昔ばそうだったかもしれないけど、今はそんな事ないもん」
「嘘つけ。今だって十分アホっぽい」
「ア、アホって……失礼ね!アホじゃないわよ」
「そうか?じゃぁ、間抜けだ」
「むぅ、おろしてよ!そういう事言う太陽兄ちゃんは嫌い」
「そうか?俺は好きだけどな。そういうお間抜けな向日葵が」
くすくす笑う太陽は向日葵を下ろさずに歩き出し、向日葵は恥ずかしさに顔が真っ赤になっていくのが分かって、少し暴れる。
そんな向日葵を押さえつけるようにして抱きかかえる手に力を入れた太陽がやってきたのは近所の公園。
ベンチに座り、自分の膝の上に向日葵を乗せて優しい微笑を向けてから、公園を見回した。
「懐かしいな。良くココで向日葵が泣いてたっけ」
「あの頃は、泣き虫だったから」
「ククッ、今もだろ?」
「い、今は泣かないよ。あ、あんまり……」
「ふ〜ん、目を赤くしてるのを良く見たような気がするけど」
「花粉症だから…だよ」
言い訳が思いつかず、苦しい言葉でとがった唇に太陽はゆっくり顔を近づけてそっとキスをする。
唇が触れた瞬間、向日葵は恥ずかしさで瞼を閉じたが、なかなか離れようとしない唇に様子を見る為にそっと瞳を開けた。
視界に飛び込んできたのはまっすぐ自分を見つめる太陽の視線。
二人の視線が絡み合って、数秒、太陽が離れてその唇の先が互いに少し触れ合う程度の距離になる。
「太陽兄ちゃん、ずっと見てたの?恥ずかしいよ」
「ずっと、見てた。これからもずっと見てる」
「え?」
「向日葵はずっと俺を見てたんだろ?昔も、そして、帰って来てからも」
太陽の言葉に少し視線をはずして小さく「うん」と言った向日葵に、もう一度軽いキスをして、向日葵の視線をもどし太陽は続ける。
「俺はずっと迷ってた。向日葵の視線に応えるべきかどうか。俺も色々あるから」
「うん」
「でも、決めた。俺はこれからずっと向日葵を見つめ続けるし、向日葵の傍にいる。向日葵を照らしていけるのは太陽だけだもんな。あ、向日葵も俺をちゃんと追いかけろよ。余所見なんてしたら承知しねぇぞ」
柔らかく悪戯な微笑みを向ける太陽に、自然と向日葵の目からは涙が零れ落ちていた。
そんなことを言ってもらえるなんて思っておらず、向日葵はずっと太陽を見つめてかれていくのだと思っていたから嬉しさで壊れてしまいそうになる。
流れる涙を拭くこともせず、太陽に抱きついた向日葵はその耳元にそっと囁いた。
「余所見なんて出来ないよ。太陽がどこかに言っちゃったら向日葵は枯れちゃうもの」
「枯らせないよ。一年中向日葵を咲かせてあげる」
暖かい太陽が向日葵を包み込む。
誰もいない静かな少し寂れた公園に大きな向日葵の花が明るく光り輝き、とても優しく咲きほこった。

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