雪華〜コイスルヒト〜

<Sweet Orange Story

  Life めぐり会う言霊>

ハジマリ

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……雪だわ。
今年初めての雪。
暖冬だって言うからまだまだ先かと思ってた。
やっぱり、今日は冷えるのかしら?
朝起きて、窓を開けてね、朝の深呼吸をしたら鼻の中が凄く痛くなったのよ。
相変わらずでしょ。
ウフフ、笑っちゃうわね。
吸気の入れ替え中で少し寒い部屋の中、トーストを焼いて、目玉焼きにサラダを作って、カップスープにお湯を注いでホッと一息。
いつも通りの朝食を食べ、荷物を抱えてタクシーに乗ったのよ。
凄くドキドキして。
凄く不安で。
アナタと決めたこの場所に、ちゃんとアナタの決めた日付にやってきたわ。
真っ白な教会に、真っ白なドレスの私。
そうそう、ベールも忘れずにね……
着替えて小さな控え室にある、窓から外を見上げてた。
どんより空が嫌だな、何て思ってたけど……不思議ね。
どんより空も雪が降るんだったらって歓迎しちゃうなんて。
でも、きっと積もらないわね。
土がとても温かいから。
アナタが教えてくれたこと……
アナタが言った言葉のどんな小さな一言も……
私は全部覚えてる。
ねぇ、思い出さない?
私たちが始めて出会ったときの事……
あの日はこんな優しい雪じゃなかったね。
寒くて、とても冷たくて、そう感じていたのは私の心が冷たかったからかしら?
そうね……きっと私の心が寒かったからだわ。
あの時……私は……

「……やってらんないわ。どうして私ばっかりが」
ムシャクシャして、苛々して、呼吸をすればただでさえ、会社での出来事に傷ついている胸をさらに突き刺さしてくる冷たい空気が鬱陶しくて。
当たり前の冬の寒さにすら怒っていた。
私はくわえタバコをし、目の前を通り過ぎる楽しそうな連中を訳も無く睨みつける。
その時、私の中にあった気持ちは1つだった。
<ただ、私は頑張ってきただけなのにどうしてこうなるの?!私が何をしたって言うのよ!>
恋もせず、おしゃれだって我慢して、一生懸命にやってきた。
なのに、ただ1回の、たった1つのミスで私は……。
そうよ、連中は私がこうなることを望んでいたのよね。
いつか私がミスった時、あげあしをとろうと狙っていた。
「最低で、最悪なヤツラだわ……」
「それは君でしょ?」
「え?」
私の呟きに横から声が聞こえてきて、私は眉間に深い皺を刻んで、睨みつけるように声のしたほうを見る。
私の視線の先にはニッコリ微笑みながらも、その手に携帯灰皿を差し出す嫌味とも思える行為をしている男性がいた。
「……いらないわ。持っているから」
「そう、だったら早く出した方がいいな。もう既に灰が崩れ落ちそうだ」
イライラをつのらせる私にはその男性の落ち着いた、見通しているようなその言葉が妙に癪に触る。
それでも、そういわれて灰をその場に捨ててしまうわけにも行かない私は、イラつく彼の言う通りに行動する事になった。
組んでいた足を外して、足元においてあったA3サイズのパソコンバッグのポケットから携帯灰皿を取り出して、男性をチラリと見て私は灰をその中に入れ込んで、ついでにタバコの火も消す。
なんだか、色んな意味でそこに居辛くなった私はハァと大きな溜息をついて鞄を手にその場を後にした。
 
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