雪華〜コイスルヒト〜

<Sweet Orange Story

  Life めぐり会う言霊>

私は私? 3

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「ブシュン!……ぅんっ」
次の日、私は自分のくしゃみで目が覚める。
「……喉痛い」
ゴホッと咳をした私の声はまさにガラガラ声。
荒れに荒れた喉は唾を飲み込むだけでも傷む。
まだ体が濡れて居る状態でバスローブだけを羽織り、布団も被らず乾燥したエアコンの部屋で1晩寝れば当然の結果なのだけど。
「……何やってるんだろう。私……」
ハァと溜息をついて私はとりあえず薬箱をあけ、中から体温計を出し脇に挟んだ。
「熱が無ければ良いけど」
そういいながらも、どうせ私が熱を押して会社に行った所でたいした仕事は待っていないとも思っていた。
部署替えされる前、私が行かなくては仕事が回らないって頑張ってた気持ちは嘘みたいに今の私には無い。
ピピッ、ピピッ……
体温計が鳴って、もう一度溜息をつき液晶を見た。
「37,8……中途半端ね」
熱が出て休もうと思えるものでも、熱が無いから会社に行こうって思える体温でもない。
まるで今の私みたいに中途半端な体温に薬箱を掻き混ぜるようにして風邪薬を取り出し、重い体を引き摺って冷蔵庫を開ける。
女の部屋とは思えないほど何も無い冷蔵庫には2Lのミネラルウォーターだけが買い置きされ、その一本を取り出して薬を飲んだ。
「フー、とりあえず。行くだけ行こうかな……。家に居たってどうしようもないし」
スーツに着替えて、適当な化粧に適当な髪型で一応の身だしなみを整え、薬の瓶をバッグに放り込んでまた溜息をつき玄関を出た。
キラリと光る朝日がとても眩しく感じて思わず目を閉じる。
「……やっぱり休んだ方がいいのかな〜。ま、駄目だったら早退しよ」
ズルズルと足を引き摺って歩いていく私はきっと、他から見ればゾンビ状態なのかもしれない。
そんな事を思いつつ、どうしようもない体の重さには逆らえず、人目を気にする事無く会社へと出勤した。
会社についても、昔のように自分の席に来て見れば書類が山になっていると言う事は一切無く、綺麗に片付けられた退社する前と全く同じ光景がそこにある。
(休めばよかったかな〜)
フーと溜息をついた私に課長が「どうかしたのか?」と寄ってきたが「いえ、別に」とそっけなく答え、デスクにあるノートパソコンを開いた。
昔の部署のクセなのか、先ずはメールをチェックする。
以前は開けば10件以上の着信があったが、今は何時だって0件。
たまにきていると思えば社報だったりする。
何だか必要ないといわれているようで、いまだにこの状況にはなれていない私がソコにいて、何時でもクッと唇を噛み締めるのだった。


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