雪華〜コイスルヒト〜

<Sweet Orange Story

  Life めぐり会う言霊>

策士?な彼 2

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自宅前の扉に着いて彼はスイッと私の目の前に手を出す。
「なに?」
「鍵は?」
「……ま、まさか中まで付いてくるつもり?」
「……まさか、ココで帰らせるつもり?」
私の口調を真似るようにして言う彼に、ハァと溜息をついて、項垂れた。
「家の中は勘弁してよ……掃除だってそんなにしてなくって散らかってるんだから……」
「それじゃ、僕が片付けてあげるよ」
「……そう言う事をいってるんじゃなくって」
「?。どういうこと?」
「あのね〜、1人暮らしの女の家に上がりこもうってしていること自体を問題にしてるの」
「あぁ、そういうことか。大丈夫だよ。病人に手を出すほど馬鹿な男じゃないから」
あっさり言ってのけた彼は私が手を突っ込んだ鞄を取り上げて、容易に鍵を見つけ出し、扉を開け始める。
鍵を開けてる間も、彼は私を支えてくれていた。
彼の温かさに包まれていると、なんだか安心感もあって、彼が言う通りきっと彼は私に変な気持ちで手を出す事は無く、看病してくれるだろうと思いながらも(何だ……手は出さないんだ……)なんて、彼の言葉に落胆したりして、そんな自分を発見して真っ赤になる。
「大丈夫?」
「え?あ、ぅ、うん」
「本当に?顔が真っ赤だ……とにかく早く寝ないと」
真っ赤なのは熱のせいじゃないんだけど……と言いかけて止めた。
『じゃぁ、どうして?』なんて聞かれたらきっと答えられないもの。
本当にそこはかとなく散らかっている私の部屋の中に入って、彼はフフッと笑う。
「……悪かったわね。汚くて」
私がムッとしながら言うと、彼は首を横にふった。
「あぁ、違うよ。ゴメンゴメン。笑ったのはそうじゃなくって、相変わらずだなって思っただけだから」
「相変わらず?……相変わらずって」
私は彼のその言葉に首をかしげて意味を聞こうとしたが、彼は私をベッドの見える寝室に入れて、着替えるように言い、扉を閉める。
スーツを脱いでルームウェアに着替えながら私は彼の言葉にずっと首をかしげていた。
『相変わらず』それは、今までの私を知っている人が発する言葉。
(……私は彼と会ったことがあるの?)
思い出そうとしても、私の中に彼の顔、彼の名前は出てこない。
忘れているだけ。
その可能性は十分ある。
人の名前をおぼえるのが苦手で、顔と名前が一致しないなんてことは日常だから。
でも、今、こんなに自分が心惹かれている人の事を、そんなにすんなり忘れるだろうか?
そのときはそんなに惹かれなかったのか。それとも?
ウ〜ンと着替え終わってからもベッドに腰掛けて考え込んでいれば、彼がドアをノックしてきた。


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