雪華〜コイスルヒト〜

<Sweet Orange Story

  Life めぐり会う言霊>

策士?な彼 3

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ルームウェアは本当にラフな服だからちょっと恥かしさがあって、私は返事をする前に布団に潜り込む。
「もう、入っても大丈夫?」
聞こえてきた彼の声に「うん、大丈夫」と返事をすれば、扉の向こうから洗面器とタオルを持った彼が現れた。
ドアを入ってゆっくり私の横にやってきた彼は、ベッドサイドの小さめの引き出しの棚に洗面器を置いて、タオルを洗面器の中に入れ、少しかがんで私のおでこを触る。
少し冷たい彼の手が気持ちが良かった。
そっと、私の前髪をどけて、ゆっくり額をくっ付ける。
(わっ!近っ……)
瞳を閉じた彼の顔が目の前にやってきて、私は反射的に目を閉じた。
コツンと当てられたおでことおでこ。
口元に感じる彼の息遣いに心臓がドクンと鼓動する。
体温計……そう言おうとしたけれどやめた。
彼相手だと緊張するし、おでこで測った体温なんて何となくであって、正確では無いかもしれないけれど、心配されていると言う感じがして、なんだか懐かしい。
そう、小さい頃にお母さんが計ってくれた時のような温かい安心感が広がる感じ。
こんな風に心配されてるって感じるのは何年ぶりだろう?
風邪を引かないときはないけれど、何時だって自分で自分を看病してた。
どんなに苦しくても助けてくれる人はいなくって、それが1人暮らしなんだとそんな時だけ痛感したりして。
だからかな?何だかおでこで計ってもらうっていうさりげない事にもホンワリと温かくなった。。
(くすぐったい感じ……でも、なんだか嬉しい)
そっとおでこが離れて、彼が洗面器の中で十分水を吸い込んだタオルを絞って私の頭の上に乗せた。
「冷たくて気持ちイイ……」
私がそう言うと、彼はニッコリ笑う。
「暫く寝たほうがいいよ」
「……うん」
「出来れば薬の場所を教えて欲しいんだけど」
「テレビの下の一番下の引き出し……」
「わかった。今はおやすみ。薬は起きたらね」
「……ん」
もう一度、少し温まったタオルを濡らして、額に乗せた彼は、私の横で膝をついて微笑みながら私の頭を撫でた。
ゆっくりと、私の頭の形に添って、強くも無く、弱弱しくも無く、優しく撫でられる頭。
家に帰って来て布団に入った安心感か、1人じゃないって言う安心感か、どちらか分らないけれど、なんだかホッとして私の瞼は徐々に重くなってきた。
ボンヤリとした目で彼を見つめたまま、頑張って眼を開けていようとする私に彼が笑う。
「大丈夫、寝込みを襲うようなことはしないよ」
「そんなこと……思ってないよ」
「そう?」
クスクス笑う彼の声が徐々に遠のいて、私は重たい眠りに引き摺られて目を閉じた。


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