疑弟〜ギテイ〜

<Sweet Orange Story

  Love 愛しき言霊>

弟「司」 1

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それは突然だった。
「俺、家を出ようと思うんだ」
その一言に打ちのめされた様な気がした……
彼のその一言は家族での夕食の時、突然発表されたのだ。
そう、彼は私の弟……戸籍上は弟の司(つかさ)。
そして、私は彼の姉……戸籍上は姉の花梨(かりん)
5つ年下の弟は一番最後に会社から帰ってきた私を待って始まった夕食の時、話しだした。
辛うじて箸を落とす事無く、父の三郎と同じくおかずに伸ばしていた手を引っ込めた。
母が目を見開いて驚いている反面、私は平静を装った。
「家を出るって、司、どうしたの?」
驚いた母が司に言うと、司は返答する。
「ん、今度でも良かったんだけど、姉貴が一緒って中々無いだろ?だから今言ったんだ」
笑顔で言う司の横で、私はジッと茶碗の米粒を眺めていた。
父が聞く。
「お前、家を出てどうするって言うんだ?大学は?」
「その大学なんだけど、どうしても行きたい大学があるんだ。でも、家から通えるような場所じゃないから……そこさ、寮があるんだよ。だから1人暮らしって言うのとは違うから余計な負担はかけないつもりなんだけど……」
「そうか、どうしてもその大学に行きたいのか?」
「うん、習いたい事があるんだ」
「ふ〜、じゃ、しようが無いな。いいんじゃないか?やりたい事があって大学に行くんだ。頑張りなさい」
「ありがとう、父さん」
「寂しくなるけど仕方ないわよね…でも、受かってからの話でしょ?今しなくっても……」
「早めに話しておきたかったんだ。大学は絶対合格できる所だからさ」
寂しそうな表情を浮かべて言う母にニッコリ優しい笑顔で答えた司になんだかイライラして私はいつものように悪態をつく。
「フン!凄い自信ね〜どうせ私はレベルの低い短大にギリギリで合格したわよ」
「花梨!やめないか!」
「お前はどうしてそういう風に卑屈になるの?花梨は花梨なりに頑張ったんだからそれで良いじゃない」
攻める父と母に対して司は相変わらず笑顔を崩さず、横目で私を見て
「そういうつもりじゃないよ。花梨姉さんの事はちゃんと尊敬してる」
そう言葉を吐いた。
モヤモヤした感情が広がり、茶碗に残ったご飯をかき込んだ。
「ごちそうさま!」
食べ終わった食器をまとめて台所の流しに置くと司にフン!とそっぽを向けて自分の部屋に駆け込んだ。
 
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