疑弟〜ギテイ〜

<Sweet Orange Story

  Love 愛しき言霊>

弟「司」 4

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ある夏の日、学校から帰ると、司の部屋から女の子の笑い声が聞こえてきた。
楽しそうに可愛らしくぶった笑い声に何故かムカッとした。
司の部屋の前をワザと足音を立てて通り、部屋に鞄を投げ込むと、再び足音を立てて1階へと降りていく。
冷蔵庫から麦茶のポットを取り出し、ガラスのコップに半分ほど注いで夕食の準備をしている母に聞いた。
「……司の所に誰か来てるの?」
リズミカルに野菜を切っていた手を止めてチラッとコッチを見て母は少しつまらなさそうに答える。
「何だか、勉強を教えて欲しいとか言ってクラスメイトの女の子が来てるわよ」
「ふ〜ん、司、頭良いから」
「勉強とか言って、さっきから話し声ばっかり……本当に勉強なのかしら?」
「フフッ、母さんたら。まるで相手の女の子に嫉妬してるみたい」
私はこの時、心臓がドキンと鼓動し、ドクドクと早くなっていくのを感じた。
そう、私は自分では意識してなかったその事実に気がつく。
【嫉妬】
自分から発したその言葉は明らかに私自身に向かって発せられている言葉のようだった。
「そんなんじゃないわよ。ただ、あの女の子は母さん嫌いだわ。司にベタベタして……中学生のクセに薄く化粧までしてるのよ?なんだか、色んな意味でいやらしい感じがして嫌だわ」
母さんは私の様子に気にする事無く、視線をまな板に戻して、また、リズミカルに野菜をきりながら言う。
私は自分の動揺を悟られないようにと注意して会話を続けた。
「ま、今時の子なんじゃないの?化粧なんて普通だろうし、道端でも平気でキスしたりするんだから」
「はぁ〜司、そんな子になびいたりしないわよね?母さん嫌よ」
「そんなこと……私が知るわけ無いじゃない」
「あらあら、酷いお姉ちゃんね。心配じゃないなんて」
(心配?……心配なんて……しないわ)
「それはそうと、花梨はどうなの?」
「何が?」
「彼氏とかはいないの?」
「居ないけど?何よ……」
「そろそろ、作ったらどうなの?司は結構女の子に人気があるみたいだけど、花梨は全然なんだもの」
「何?司は彼女が出来ちゃ嫌みたいに言っておいて、私はサッサと作れって言うの?な〜んか、扱い酷くない?」
私が少々不貞腐れて言うと、母はケラケラ笑いながら言う。
「花梨は今から探しておかないと、一生この家に居るんじゃないかって思うもの。私に似ないでプロポーションもそんなに良くないし、男っぽい性格で、女の子らしいことは何も出来ないじゃない」
「そ、そんなこと……」
「あら!知らないと思ってるの?家庭科の宿題の編み物とかも全部司にやってもらってたじゃない?」
「うっ……」
「ホント、花梨は司が居ないと何も出来ないんだから……」
「……もういいよ」
母のあまりな言い分に少々乱暴に冷蔵庫に麦茶のポットを入れた私は台所を後にする。
「あそこまで言わなくってもいいじゃない……親だから何を言ってもいいってわけじゃないと思うんだけど」
自分の部屋へ行く為、階段の所までブツブツ文句を言いながら歩いてきて、二階から聞こえたバタンと言う扉が閉まる音でふとその足を止めた。
 
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