疑弟〜ギテイ〜

<Sweet Orange Story

  Love 愛しき言霊>

弟「司」 5

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「えぇ〜〜もうちょっとだけぇ〜」
階段の上から猫なで声の虫唾の走るような高い声が聞こえてきてふと見上げる。
司の腕に自分の腕を絡ませ帰りたくないとねだるセーラー服の女の子が目に入り、明らかに司にその大きな胸をアピールしていた。
(フン、母さんの言った通りね。中学生でセックスアピール?)
困ったようにしていた司が、階段下であきれたように視線を送っている私に気づいて、慌てて女の子の腕を払い、女の子に言う。
「もう遅いし、ウチも夕食だから。続きは明日学校で教えるよ」
(続き?はっ!一体何をお勉強するのやら……イライラするわ)
「ぶぅ〜〜そんなぁ〜もうちょっと良いじゃない」
上目遣いで司を見つめ、両腕で胸を寄せて谷間を強調するその女の子に私は溜息をついて思わず言ってしまった。
「……よその家の迷惑も考えたら?」
「え?!」
私の存在に気付いてなかったのか、女の子は驚いて私の方を見、少し狼狽して私と司を交互にチラチラみる。
「姉……なんだ」
「え?お、お姉さんが居たの?」
「うん……」
「(何?司はそんなことも話してないの?)そう、お姉さんが居たのよ。もうすぐ日も落ちるし、早く帰りなさい。あまり、人の家にお邪魔して、その家の人に迷惑をかけるものでは無いわよ?」
「あ……えっと……」
私は恐ろしいほど冷たい口調になっていると気づいたのは女の子が怯えるようにオズオズと司の影に隠れた時だった。
「玄関まで送るよ。帰るでしょ?」
司の問いかけに素直に頷いた女の子は司の後ろをついて階段を降り、私の横を通り過ぎるときチラリとコチラを見てボソリと呟く。
「……なによ、オバサンのクセに」
女の子の言葉に、怯えていたのも、司に隠れていたしおらしい可愛さも計算した演技だと悟って私はただ呆れた。
玄関へと向かう2人を見送りながらも気になった私は物陰から2人の様子を見ていたが、それに気づいた女の子はキュッと司の腰に手を回して抱きついて、驚く司の体越しにコチラを見てニヤリと笑った。
(あの子……嫌な感じ……)
なるべく、顔色を変えないよう冷めた表情で嘲笑し、その女の子の笑いに答えてやると、女の子はムッと一瞬目を細めたが、次の瞬間、司が女の子を自分から引き剥がす。
「ぁん……」
「……そういうこと、やめてくれないかな」
「え?」
「虫唾が走るほど嫌なんだ……」
ワザとらしく可愛く喘ぎに似た声を出した女の子だったが、止めてくれないかと司の低く冷たい声に驚いて無言のままうなづくと、後ずさりをするように玄関から出て行った。
恐らく本当に司が怒っていたのだろう。
私でさえもそんな司の声色を聞くのは久しぶりの事。後ろからで表情は見えなかったが、女の子の様子を見ると物凄く怖い顔でもしていたのだろうと思った。
 
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