疑弟〜ギテイ〜

<Sweet Orange Story

  Love 愛しき言霊>

弟「司」 6

イメージ


玄関の扉がしまり司は物陰から見ていた私の方へ近づくとにっこり優しい笑顔を向けて見下ろしてくる。
そう、その頃には既に司は私の身長など抜かしてしまい、いつの間にか私が見上げる立場になってしまっていた。
「何?」
私が笑顔の司にムッとした様な表情を浮かべながらそう言うと司は笑顔を崩す事無く答える。
「……別に」
「嫌な感じ!」
思春期からだろうか、私が高校生になると何故か私は司と話をしなくなった。
別に喧嘩をしたわけでもないし、特別2人の間に何かがあったわけじゃない。でも、離さなくなってしまったのだ。
話さない時期が長くなると、次に話してもいいかと思うようになっていても中々会話のタイミングがつかめないもので、今でもつい、私は司と話す時、怒ったような口調になってしまっていた。
それに、今となっては会話と言えば「おはよう」や「おやすみ」程度になってしまっている。
日常、司は良くリビングにいることが多かったから、私は会話をしなくて済むという理由だけで逃げるように自分の部屋に篭っていた。
どうして?って聞かれても答えなんて分らない。ただ、話さなくなったし、司をあまり見なくなった。
だから、私の「嫌な感じ」という言葉以降、2人は何も言わず、司は悲しそうに、私は睨み付ける様に視線をぶつけていた。
「2人ともご飯よ〜〜」
母の声に、何となく救われたと思った私は司の視線から自分の視線をはずし、食堂へと移動した。
食事が終り、私が自分の部屋で何だかムカムカした気分が抜けきらずベッドに仰向けで横になっていると、扉がノックされる。
「誰?」
「……俺」
「司?」
「うん」
「何か用?」
「……」
喋らなくなってから司も私に遠慮してか、それまで平気で入って来ていたりした私の部屋には入ってこないし、寄り付かなくなっていた。
でもその日、久々に司が私の部屋を訪ねてきて、私の問いかけにも答えようとせず無言ままその場にいるので、私は半分それまで抜け切っていないイライラした状態でベッドから起き上がって扉を開けた。
私の目の位置は丁度司のみぞおちの辺り。
司の表情を見るのも癪だとドアを開けて見上げる事も無く私はいつものように面倒くさそうに声をかけた。
「……何?」
「……」
それでも司は答えようとはせず、その場に立っている。
暫く待っても全然返事の無い司に、私のイライラもいつの間にかどこかに行ってしまって、逆に返事の無い状態が心配をあおり、顔をあげて司の顔を見ると、司はとても暗く寂しそうな顔をして立っていた。
「ちょ、ちょっと……司?」
思わず私は司の腕を握って少し司を揺らす。
すると、司はその腕を上げて私の肩に手を置き言った。
「……入っていい?」
「え?あ、あぁ、良いけど……」
司は私の肩に手を置いたまま、部屋の中に私の体を押し入れるようにして自分も部屋に入り、パタンと部屋の扉を閉めた。
 
イメージ上へ
イメージ イメージ イメージ


web拍手 "
ぽちっとクリック応援よろしくお願いします♪

inserted by FC2 system