疑弟〜ギテイ〜

<Sweet Orange Story

  Love 愛しき言霊>

弟「司」 7

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「ねぇ……」
扉が閉まり、暫く私の肩に手を置いていた司はその手を私の頬に移動させ、私の顔を包み込むようにして、私の視線まで腰を落として聞く。
「花梨姉さん……怒ってる?」
唐突な質問に多少驚きながらも、司の両手首を手で握って手を顔から放し、ベッドに歩いていってドサッと乱暴に腰掛け、落としていた腰を伸ばして立ってコッチを見つめる司を見て答える。
「別に。どうして?」
「だって、怒っているようにしか見えないから……」
「……怒るような事は何も無いし、私は司がどんな女の子と付き合おうと気にして無いわよ?」
「別にあの子の事で怒ってるのかとは聞いてないけど」
司の言い方に、私は司の誘導尋問に引っ掛かったようなそんな感じがして、ムッと口をゆがめ司をにらんだ。
「良い性格してるわね?だからアンタって嫌いよ」
「……そんな風に言わなくっても」
「だって、そうでしょ?そうやって私の無能を笑えばいいわ。紹介も出来ない姉ですものね?」
「そんな風には思ってない」
「フン。だって、あの子。司に姉が居るなんてはじめて知った風だったわよ?」
「それは!……そんな話は学校ではしないから」
シュンと俯いて目線を下げた司は複雑な表情を浮かべていたが、私はそれを見て見ぬ振りして続ける。
「ま、いいわ、自慢できるような姉じゃないってこと位ちゃんと自分で分ってるもの。ただ、あの子はあまり好きじゃないわ」
「そう……」
「私の事オバサンって言ったのよ?信じらんない。人の家に上がっておいてその家の人に対してそんなこと普通は言わないわよ?司があの子みたいに、おっぱいの大きな子が好きでもあの子は止めておいたほうがいいわね。裏表がありすぎ。コレは【姉】としての忠告」
「【姉として】か……」
フーと大きな溜息が聞こえ、私の方を見た司にちょっと嫌味っぽく言ってしまったかな?と気不味く思った私は何気に司の視界から逃れるようにそっぽを向いた。
次の瞬間、私は息苦しさに包まれる。
そっぽを向いた左頬に温かさが伝わり、左耳からはドクドクとした心臓の物凄く早い鼓動が聞こえ、優しく包み込んでいるその中はとても温かく、少し震えていた。
私はその状態が司に抱きしめられているんだと気づくのに多少の時間がかかり、声をかけるのも遅れてしまった。
それに、優しく抱いてくれているとは言え、何か感情に迫るものがあるのか、力の込められた両腕に窮屈な感じがして私は言う。
「司……苦しい」
「……ごめん」
司は一言謝ると、ゆっくり腕の力を緩め、私はその瞬間、体をよじって司の胸の中から抜け出て、スイッと司から1メートルほど距離を置くように離れ背を向けた。
既に私の心臓ははじけるかと言うほどに動悸がしていたが、声色に気をつけて、司に背中を向けて言う。
「司、何だか変だよ…何?どうかした?」
「花梨姉さん……わからない?」
「わからないって……うぁっ」
背中にジンワリと温かさが伝わり、私の肩にはチョットした重さが感じられ、顔の横からは司がまた細い腕を逃がさないように私に絡ませていた。

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